ダンダーン

分 類イスラーム
名 称 دَّنْدَانُdandān〕(ダンダーン)【アラビア語】
容 姿巨大な魚の怪物。
特 徴人魚たちの敵。人間の叫び声で死んでしまう。
出 典『アルフ・ライラ・ワ・ライラ』ほか

巨大なダンダーン、漁師の叫び声で死ぬ!?

ダンダーンはアラビア伝承の巨大な魚である。『アルフ・ライラ・ワ・ライラ(千一夜)』の「陸のアブド・アッラーフと海のアブド・アッラーフの物語」の中で言及されている。漁師のアブド・アッラーフは、あるとき、人魚のアブド・アッラーフと友人になり、陸の果物(ブドウやイチジク、ザクロなど)と海の宝石(真珠や珊瑚、橄欖石やエメラルドなど)を交換するようになる。こうして、漁師のアブド・アッラーフは豊かになる。あるとき、人魚は漁師を海の世界に招待する。しかし、当然、漁師は海中では息ができない。すると、人魚はダンダーンという魚の肝油を全身に塗るように言う。ダンダーンの肝油を塗れば、海中で息ができるというのだ。ダンダーンというのは、陸上のゾウやラクダを呑み込めるほどの巨大な魚で、海中にはたくさん棲んでいるという。けれど、弱点があって、人間の肉を食べるとダンダーンは死んでしまう。人魚たちは、ダンダーンが誤って海で溺れた人間を食べて死ぬと、そのダンダーンから肝油を集め、全身に塗ることで海中を自由に泳いでいたのである。ダンダーンにはもうひとつ、弱点があり、それは人間の叫び声である。人間の叫び声を聞くと、ダンダーンは死んでしまうという。

漁師のアブド・アッラーフは、人魚のアブド・アッラーフに言われるままに、ダンダーンの肝油を全身に塗って、海に飛び込んだ。果たして、海中でも息ができた。こうして、漁師は海中を案内された。大小さまざまな魚が泳いでいる。すると、突然、巨大な魚が襲ってきた。人魚を狙ったダンダーンである。人魚は漁師に叫び声をあげるように言う。漁師が叫ぶと、ダンダーンは本当に死んでしまった。

《参考文献》

Last update: 2023/04/30

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