ブネ

分 類魔法書文献
名 称 Bune(ブネ)【ラテン語】
Bim(ビム)、Bimé(ビメ)
容 姿3つの頭も持った竜。
特 徴死体を動かし、墓場に悪霊たちを集める。
出 典ヴァイヤー『悪魔の偽王国』(1577年)、『レメゲトン』「ゴエティア」(17世紀頃)ほか

墓場をうろつき、死体を動かす悪霊!?

ブネはソロモン王が使役したとされる72匹の悪霊の1匹で、魔法書『レメゲトン』「ゴエティア」の26番目に名前を挙げられている。この魔法書はソロモン王が記したものとされ、さまざまな地獄の悪霊たちを呼び出す方法が書かれている。それによれば、ブネは地獄では公爵の位にいて、30個の悪霊の軍団を率いている。

「ゴエティア」では人間、イヌ、グリフィンの3つの頭を持った竜の姿とされる。ただし、他の文献ではイヌやグリフォンなどの記述はなく、3つのうちの1つが人間の頭とだけ書かれている。なお、グリフィンはライオンの身体にワシの頭と翼、前脚を持った怪物なので、グリフィンの頭とは、すなわちワシの頭と同義である。

ブネは死体を安置されていた場所から別の場所に移動させたり、墓地に手下の悪魔たちを集結させたりする能力を持つ。また、呼び出した人間に富、思慮深さと雄弁さを与えてくれる。

『悪魔の偽王国』で描かれるブネ

魔術師アグリッパの弟子として知られるヨーハン・ヴァイヤーが著した『悪魔の偽王国(プセウドモナルキア・ダエモヌム)』では69匹の悪霊たちが紹介されている。そこで24番目に紹介されるのがブネである。

Bune Dux magnus & fortis, apparet ut draco, tribus capitibus, tertium vero assimilatur homini. Muta loquitur voce: Mortuos locum mutare facit, & dæmones supra defunctorum sepulchra congregari: omnimodo hominem locupletat, redditque loquacem & sapientem: ad quæsita vere respondet. Huic legiones parent triginta.

ブネは偉大で強力な公爵で、3つの頭を持った竜の姿で出現する。3つ目の頭は人間に似ている。彼は小声で喋る。死体の場所を移動させ、死者の墓に悪霊たちを集める。彼は人間を裕福にし、雄弁で思慮深くさせる。求めに応じて真実を応える。30個の軍隊が彼に従う。

(ヨーハン・ヴァイヤー『悪魔の偽王国』より)

『レメゲトン』「ゴエティア」に描かれるブネ

17世紀頃には成立していたと考えられている中世の魔法書『レメゲトン』の第1部「ゴエティア」にアガレスの記述がある。「ゴエティア」はソロモン王が使役したという72匹の悪霊について、その召喚の手順を具体的に記したもので、必要な呪文や魔法陣、72匹の悪霊たちのそれぞれの能力や紋章(シジル)、召喚に際しての注意事項などが書かれている。「ゴエティア」ではブネは26番目に紹介されている。

BUNE, or BIMÉ.--The Twenty-sixth Spirit is Buné (or Bim). He is a Strong, Great and Mighty Duke. He appeareth in the form of a Dragon with three heads, one like a Dog, one like a Gryphon, and one like a Man. He speaketh with a high and comely Voice. He changeth the Place of the Dead, and causeth the Spirits which be under him to gather together upon your Sepulchres. He giveth Riches unto a Man, and maketh him Wise and Eloquent. He giveth true Answers unto Demands. And he governeth 30 Legions of Spirits. His Seal is this, unto the which he oweth Obedience. He hath another Seal.

ブネの紋章1ブネの紋章2

ブネ、あるいはビメ:第26番目の悪霊はブネ(あるいはビム)である。彼は強力、偉大かつ強大な公爵である。彼は3つの頭を持つ龍の姿で出現する。ひとつはイヌ、ひとつはグリフォン、ひとつは人間のような頭である。彼は高く魅力的な声で喋る。彼は死体の場所を移動させ、配下の悪霊たちをあなたの墓所に集めさせる。彼は人間を裕福にし、思慮深く雄弁にする。求めに応じて真の答えを与える。彼は30個の悪霊の軍隊を統治する。彼が従わざるを得ない彼の紋章はこれである。彼はもう一つ紋章を持つ。

(メイザース&クロウリー『ゴエティア』より)

コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』のブネ

フランスの文筆家コラン・ド・プランシーが1818年にまとめた『地獄の辞典』は改訂を重ね、1863年の第6版ではブレトンの悪魔の挿絵が加わった。残念ながら、ブレトンの絵は付されなかったが、『地獄の辞典』でもブネは紹介されている。プランシーはタタール人に伝わる悪霊ブニスとの関連を指摘しているが、詳細はよく分からない。

Bune, démon puissant, grand-duc aux enfers. Il a la forme d'un dragon avec trois têtes, dont la troisième seulement est celle d'un homme. Il ne parle que par signes; il dèplace les cadavres, hante les cimetières et rassemble les démons sur les sépulcres. Il se vante d'enrichir et de rendre éloquents ceux qui le servent. Trente légions lui obéissent.

Les démons soumis à Bune, et appelés Bunis, sont redoutés des Tartares, qui les disent trésmalfaisants. Il faut avoir la conscience nette pour être à l'abri de leur malice; car leur puissance est grande et leur nombre est immense. Cependanta les sorciers du pays les apprivoisent, et c'est par le moyen des Bunis qu'ils se vantent de découvrir l'avenir.

ブネは強大な悪魔で、地獄の大公である。彼は3つの頭を持ったドラゴンの姿で、そのうちの3つ目の頭だけが人間のものである。彼は合図だけで喋る。死体を移動させ、墓地に出現して、墓地に悪魔たちを集める。彼は彼に仕える人々を裕福にし、雄弁にすることを誇っている。30個の軍隊が彼に従っている。

ブネは、タタール人たちがとても邪悪だと恐れたブニスと呼ばれる悪魔だとされる。彼らは非常に強力で、数も膨大なので、彼らの悪意から身を守るには、明確な良心が必要となる。しかし、国の魔法使いが彼らを飼いならしたため、彼らはブニスによって、未来を見い出したと豪語する。

(コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』より)

《参考文献》

Last update: 2021/02/07

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