小豆洗い(アズキアライ)

分 類日本伝承
名 称 小豆洗い(アズキアライ)【日本語】
小豆とぎ(アズキトギ)【日本語】
別 称小豆さらさら、小豆アゲ、小豆ごしゃごしゃ、小豆そぎ、小豆こし、小豆ヤロ、小豆あらいど
容 姿音だけで姿は見せない。
特 徴小川などで小豆を洗う音を立てる妖怪。けれども、その姿は見えない。音に気を取られていると川へ落っことされてしまう。その正体は幽霊ともイタチや狐、狸などの小動物とも言われている。
出 典『絵本百物語』ほか

姿なき音だけの妖怪!?

小豆洗い(アズキアライ)は、小川などに出没し、「シャキッ、シャキッ」と小豆を洗うような音を立てる妖怪である。ただ音を立てるだけで、実際、その姿を見たものはいないという。何とも摩訶不思議な妖怪である。東北地方から中国地方まで、幅広く日本全国に伝承が残っている。そのため、小豆磨ぎ、小豆さらさら、小豆ごしゃごしゃなど、地域ごとにさまざまな名称で呼ばれている。

家の中にいると、どこからか外から小豆を洗うような音が聞こえてくる。しかし、外に出てみても誰もいない。そういう不思議な怪異である。大分県では「小豆洗おか、人取って喰おか」などと物騒な歌を歌いながら小豆を洗うという。そして、音に気を取られていると川縁へと誘われ、川へと落とされるという。また、埼玉県や群馬県、島根県などの一部では小豆洗いが人を攫うとも伝わっている。

幽霊が小豆を洗う!?

小豆洗いは姿が見えないので、その正体について議論され、しばしば、人間の幽霊であると説明されることがある。例えば、『絵本百物語』の「小豆あらい」には次のような話が載っている。

越後国の高田(現在の新潟県上越市)のある寺に日顕(にちげん)という小僧がいた。物を数えるのが得意で、小豆の数を間違いなく言い当てた。寺の和尚さんはこの小僧をかわいがり、跡を継がせようと考えたが、円海(えんかい)という僧がこれを妬んで、日顕を井戸に投げ込んで殺してしまった。それ以来、近くの川で小僧の霊が夜な夜な小豆を洗って数を数えるようになったという。

このほかにも、東京都檜原村の伝承によれば、ある女性が小豆に小石が混ざっていたことを姑に叱られ、川に身を投げた。それ以来、この川からは小豆をとぐ音が聞こえるようになったという。このように小豆洗いの正体を幽霊とする地方がある。

小豆を洗う音は狐狸の仕業!?

一方で、その正体を小動物とする地方・伝承もある。山道でイタチが尻尾で小豆の音を立てるとか、イタチの鳴き声が小豆の音を出すなどとされる地域もあれば、狐や狸、川獺(かわうそ)の仕業とされる地域もある。津村淙庵は随筆『譚海』で、その正体は狢(むじな)であると論じている。また、ガマガエルやヒキガエルが立てる音であると説明する地域もある。根岸鎮衛は『耳嚢』の中で、ガマガエル説を採っている。

小豆洗虫って何!?

ちなみに、江戸時代には「小豆洗虫(あずきあらいむし)」という昆虫が知られていたようだ。現在の噛虫(チャタテムシ)のことと考えられているが、この虫が紙を食べるために障子に止まったときに翅を動かす音が障子と共鳴すると、まるで小豆を洗うような音がすることが指摘されている。これが小豆洗いの伝承に結び付いた可能性もある。

《参考文献》

Last update: 2013/05/20

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