アイム

分 類魔法書文献
名 称 Aim(アイム)【ラテン語】
Aym(アイム)、Aini(アイニ)、Haborym(ハボリュム)
容 姿蛇、人間、猫の3つの頭を持った悪霊。蝮に跨り、火のついた松明を持つ。
特 徴地獄の公爵。あちこちに放火する。人間を賢くする。
出 典『レメゲトン』「ゴエティア」(17世紀頃)ほか

あちこち放火して回る悪霊!?

アイムはソロモン王が使役したとされる72匹の悪霊の1匹で、魔法書『レメゲトン』「ゴエティア」の23番目に名前を挙げられている。この魔法書はソロモン王が記したものとされ、さまざまな地獄の悪霊たちを呼び出す方法が書かれている。それによれば、アイムは地獄では公爵の位にいて、26個の悪霊の軍団を率いている。

身体は非常に均整のとれた男性の身体をした悪霊だが、頭は3つあり、ひとつは蛇、ひとつは人間、ひとつは猫の頭をしている。人間の頭部の額の部分には2つの星をつけている。マムシにまたがり、手には火の点いた松明を持っていて、その火であちこちの都市や城、広場に火を放つという。プランシーの『地獄の辞典』では「火の悪魔」と記述されている。

アイムには、あらゆる分野で人間を賢明にする能力があるが、特に非常に個人的な物事に関して真実を教えてくれるという。

『レメゲトン』「ゴエティア」に描かれるアイム

17世紀頃には成立していたと考えられている中世の魔法書『レメゲトン』の第1部「ゴエティア」にアイムの記述がある。「ゴエティア」はソロモン王が使役したという72匹の悪霊について、その召喚の手順を具体的に記したもので、必要な呪文や魔法陣、72匹の悪霊たちのそれぞれの能力や紋章(シジル)、召喚に際しての注意事項などが書かれている。「ゴエティア」ではアイムは23番目に紹介されている。

AIM. - The Twenty-third Spirit is Aim. He is a Great Strong Duke. He appeareth in the form of a very handsome Man in body, but with three Heads; the first, like a Serpent, the second like a Man having two Stars on his Forehead, the third like a Calf. He rideth on a Viper, carrying a Firebrand in his Hand, wherewith he setteth cities, castles, and great Places, on fire. He maketh thee witty in all manner of ways, and giveth true answers unto private matters. He governeth 26 Legions of Inferior Spirits; and his Seal is this, which wear thou as aforesaid, etc.

アイムの紋章

アイム:23番目の悪霊はアイムである。彼は偉大で強力なる公爵である。彼は非常に均整のとれた男性の姿で出現するが、頭部は3つある。1つ目は蛇、2つ目は人間で額には星が2つついている。そして3つ目は仔牛※注の頭部である。彼は毒マムシにまたがり、手に松明を持ち、それで都市や城、広場に火を放つ。彼はあらゆる分野において汝を賢くし、個人的な物事に対して真の答えを与える。彼は26個の地獄の悪霊の軍団を統治している。彼の紋章は以下のもので、これを汝は前述のように身につける。

※注 一般に、3つ目の頭部は「猫」とされるが、メイザース&クロウリー版の『ゴエティア』では「仔牛(Calf)」となっている。これは「猫(Catt)」の誤植だと思われるが、そのまま訳出した。

(メイザース&クロウリー『ゴエティア』より)

コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』に描かれるハボリュム

フランスの文筆家コラン・ド・プランシーが1818年にまとめた『地獄の辞典』は改訂を重ね、1863年の第6版ではブレトンの悪魔の挿絵が加わった。その中では「ハボリム」として紹介されている。

Haborym, démon des incendies, appelé aussi Aym. Il porte aux enfers le titre de duc; il se montre à cheval sur une vipère, avec trois têtes, l'une de serpent, l'autre d'homme, la troisième de chat. Il tient à la main une torche allumée. Il commande vingt-six légions. Quelques-uns disent que e'est le même que Raum; ce qui nous paraìt au moins douteux.

ブルトンの描くハボリム

ハボリムは火の悪魔で、アイムとも呼ばれる。彼は地獄では公爵の称号を持つ。彼は蝮にまたがって出現する。3つの頭を持ち、1つは蛇、もう1つは人間の男性、3つ目は猫のものである。彼は火を点けた松明を手に持っている。彼は26個の軍団を指揮する。ラウムと同じだと言う人もいるが、少なくとも疑わしい。

(コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』より)

《参考文献》

  • 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
  • 『Pseudomonarchia Daemonum』(著:Johann Weyer,1577年)
  • 『Dictionnaire Infernal』(著:J. Collin de Plancy, 1863年)
  • 『The Book of the Goetia of Solomon the King』(著:S.L.MacGregor Mathers/Aleister Crowley, 1904年)

Last update: 2020/04/06

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