アビー・ラバー

分 類イギリス伝承
名 称 Abbey Lubber(アビー・ラバー)《修道院の怠け者》【英語】
容 姿修道士の格好をした悪霊。
特 徴修道院に棲みついて修道士たちを堕落させる。
出 典『修道士ラッシュ』(15世紀頃)

修道士たちに深酒、暴食、好色を勧める悪霊!?

アビー・ラバーはヨーロッパに伝わる修道院に棲みつく悪霊で、修道士たちを堕落の道に誘い込んだ。特に15世紀頃からヨーロッパでは修道院が腐敗し、修道士たちは贅沢をするようになった。それを揶揄するような形で誕生したのがアビー・ラバーだと考えられる。修道院の厨房や酒蔵に出没し、修道士たちを深酒や暴食、好色に誘惑し、より堕落するように仕向けるという。

ラッシュ修道士、修道院を腐敗させる!?

最も有名なアビー・ラバーと言えば、フライヤー・ラッシュ(Friar Rush、ラッシュ修道士)で、ラッシュと名乗って修道士に化けて修道院にやってきた。そして、7年間、多くの修道士たちを堕落させたという。この語は元々はドイツの物語(『Bruder Rausch(ブルーダー・ラウシュ)』)だが、英訳されてチャップ・ブックなどで広くイギリス全土に流布した。

この物語に登場するフライヤー・ラッシュは、修道士たちを堕落させるように、悪魔たち(ベルフェゴール、アスモデウス、ベルゼブブなどのそうそうたる面々)に命じられて差し向けられた小悪魔である。貧しい若者を装って修道院長に拾われ、厨房で働き始める。修道士たちに夜のお伴として女性をあてがったり、四旬節や晩節、金曜日などの禁じられた日に肉類を提供したりした。料理長を煮えたぎった鍋に放り込んで殺したりもする。修道院に不和の種として修道院長派と副院長派の対立をもたらし、双方に武器も提供し、血で血を争う闘争にまで発展する。しかし、遂に修道院長に正体がバレて、修道院から追放された。修道士たちはこの出来事を深く恥じ、悔い改めて、その後は品行方正になったとされる。

《参考文献》

  • 『妖精 Who's Who』(著:キャサリン・ブリッグズ,訳:井村君江,ちくま文庫,1996年〔1979年〕)
  • 『妖精事典』(編著:キャサリン・ブリッグズ,訳:平野敬一/井村君江/三宅忠明/吉田新一,冨山房,1992年〔1976年〕)

Last update: 2024/04/14

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