2016年4月23日 Google Noto Fonts

ファンタジィ事典で世界各国の妖怪を紹介している関係、原語にこだわっている。たとえば、英語のウェブサイトで「天狗」のことを「Long-nosed Goblin」などと紹介してあったら、ちょっと引く。でも、これは冗談ではなくって、日本の英語の辞書なんかには、Long-nosed Goblinという項目があったりする。同様のことはよくあって、例えば、ウェールズの「ウォーター・リーパー」という妖精なんかは、Wikipediaでもウォーター・リーパーの項目で載っているが(英語でもWater Leaperだ)、これはウェールズではLlamhigyn Y Dwr(サムヒギン・ア・ドゥール)と呼ばれていて、勿論、意味するところは《ウォーター・リーパー》なんだけれど、英語圏の人がそういう紹介をして、いつの間にか、そういう名称が普及してしまった格好なのだろう。

ボクとしては、あんまり、そういう訳語を使いたくなくって、現地での固有名詞を並べるウェブサイトにしたいと思っている。その一方で、外国語には日本語にはない発音がたくさんあるので、当然、カタカナ化には限界があるので、その間で煩悶する。その解決策として、原語での記載を併記する。ドイツ語ならドイツ語、フランス語ならフランス語、ロシア語ならロシア語、ギリシア語ならギリシア語だ。ところが、当然、マニアックな言語、例えばタイ語やミャンマー語、ラオス語などになると、コンピュータ側の印字に問題が生じる。対応フォントを設定してやらないとうまく印字されない。ましてや古代の言葉、ヒエログリフや楔形文字、アヴェスター語になると、対応フォントがデフォルトではインストールされていない。従って、文字化けになる。

こういうのは、いつかは解消されるだろう、と大学生の頃から、ボクは楽観的に思っていた。Unicodeとしては種々の言葉がどんどん登録されていくので(最近では麻雀牌や日本のケータイ絵文字も登録されている!)、Unicodeに全て対応するフォントが、いずれは出てくるだろうと思っていた。そして、そういうフォントが作成されれば、デフォルトでOSにインストールされるのではないか、とも思っていた。でも、今のところ、Unicode全てに対応したフォントは登場していない。ニーズの問題と、技術的な問題と、両方あるのだろうけれど、想像していたよりもずぅっと遅れている。

そんな中で、Googleでひとつのプロジェクトが動いている。多言語化に対応するために、Notoフォントというパッケージが作成されている。Notoフォントのパッケージを全てダウンロードすると、全てのUnicodeに対応する。つまり、ボクの理想形に限りなく近い。ただし、ひとつのフォントではなく、フォントのパッケージである。全Unicodeに対応させるとものすごく重くなるらしく、結局、それぞれの言語で分割して、パッケージとして対応するという判断になったらしい。まあ、パッケージで全Unicodeに対応しているのだから、それでいいじゃないか、という話もあるのだが、例えば、Wordで文書を作成して、日本語で文章を書いていて、途中に楔形文字を入れることを想像してみる。Word全部でたったひとつの『Noto Fonts』で対応してくれれば楽ちんなのに、現状としては、日本語の部分は「Noto Sans CJK JP」、楔形文字の部分は「Noto Sans Cuneiform」を指定しなければならない。ウェブサイトも同様で、スタイルシートで言語に応じてフォントをしてやらなければならない。

その一方で不思議なこともあって、日本のケータイの絵文字だ。Unicode.orgを参照してもらいたいのだが、いつの間にか、日本のケータイ文化の中で育った絵文字は、いつの間にか「Emoji」として世界基準になって2010年にUnicodeに登録され、ケータイ会社3社で統一化されたり、各種のSNSやblogサービスにも対応するなど、広がりを見せているが、実は最新のwondows OSでは、普通に絵文字が印字できるようになっている。「らくだ」と打って変換すると「🐪」になる。絵文字を印字させるためにわざわざ対応したフォントを作成しているわけだ。こんなものをデフォルトに実装するくらいなら、もっと別のことをやってくれよ、と内心、ボクは思っているわけだけれど、ニーズには勝てない、ということ。だから、もっともっと多言語化にニーズがあることをアピールしなきゃいけない、ということで、ファンタジィ事典では、たとえ文字化けになっていようとも、原語を使い続けているわけである。

ちなみにNotoフォントのNotoは「no more tofu」の略らしい。文字化けしたときの□をgoogleは「豆腐」と読んでいて、これを取り除こうというコンセプトらしい。この主義主張には大いに賛同できるので、ボクは今、順次、ファンタジィ事典をNotoフォントに対応させている。ミャンマー文字を印字するためにMyanmar3フォントを、アヴェスター文字を印字するためにAhuramzdaフォントを、楔形文字を印字するためにAkkadianフォントをわざわざダウンロードしてインストールするのは大変だけれど、Notoフォントのパッケージをダウンロードすれば済むなら、その方が断然、いい。

NotoフォントのパッケージはGoogle Noto Fontsからダウンロードできるので、是非!!