2020年7月11日 人類史上最大のトリック……? それは、人々に神がいると信じさせたことだ。

iPhoneのYouYube公式アプリが、いつの間にかバックグラウンド再生ができるようになっていた。ずぅっと望んでいたことだったんだけど、でも、うっかりホームボタンで閉じて、気付いたらイヤホンで鳴りっ放しという状況で、これはこれで困ったものである。まあ、嬉しい悲鳴。

さて、今、『人類5000年史』という本を読んでいる。作者が出口治明氏で、非常に博識で、文章も軽妙な人なので、期待していた。コロナ明けに地元の本屋さんに行ったら、2巻、3巻は平積みなのに、肝心かなめの1巻が置いていなかったので、取り寄せてもらって、ようやく手に入れた。非常に面白い。何よりも楽しかったのが、『人類5000年史』とタイトルに掲げながら、最初の章が生命の誕生から始まっていたこと。ルカ(最終共通祖先)の話や、エディアカラ紀のアバロン爆発、カンブリア紀のカンブリア爆発、そして大量絶滅のビッグファイブの話があった後、人類がどうやって脳を発達させたのかという生物学的な話を経て、ようやく人類の歴史に至るというアプローチに、ボクは大爆笑して、そして大満足した。これでこそ「知の巨人」の作品だ。

日々の雑記で取り上げようと思ったのは「神」についての彼の整理が面白かったからだ。ファンタジィ事典では、しばしば神話を取り上げ、「神」も題材にするが、『人類5000年史』の中で、神の発明のついての記述が非常に面白くて、ボクはそれを紹介したいな、と思った。

 ドメスティケーション以前の人間は、いわば、「自然に順応して」生を営んでいました。それが、「自然を支配したい」という欲求に変化したのです。植物を支配するのが農耕(約一万一〇〇〇年前)、動物を支配するのが牧畜(約一万五〇〇年前)、鉱物を支配するのが冶金(火を介在させた金属器の使用、約九五〇〇-九〇〇〇年前)、そして、それらに留まらず自然界の摂理をも支配したいと考えるようになりました。
 自然界と現在の世界をつなぐものとして儀礼や土偶が誕生し、やがて神の誕生に至ったと考えられています。最も古い土偶は、約九〇〇〇年前まで遡ります。

この文章に、正直、ボクは痺れた。ここで言う「植物」「動物」「鉱物」という言葉は、古い博物学の分類方法から引っ張られてきている。博物学では古来より、自然に存在するものを植物界、動物界、鉱物界の三界に分類してきていて、分類学の父と称されるカール・フォン・リンネも、この三界で分類しているくらいだ。それを、人類は順番に支配してきた、という書き方に、ボクは震えた。そして、順番に人類がそれらを支配する。そして、最後には自然界の摂理を支配しようとする。そのときになって「神」が発明される、というわけだ。天候も豊饒も、そして死後さえも、ボクたちは支配しようとして、そのために神が必要になる。

そんなわけで、タイトルは森博嗣の『笑わない数学者』からの引用。人々に「神」がいると信じさせたのは誰なのか。さてはて。