2026年8月9日 中国とベトナムでなぜ違う? 「魔」と「鬼」の漢字の歴史
中国語では、死者の霊は「鬼(グイ)」という言葉が使われている。日本でも、たとえば「鬼籍に入る」とか「鬼門」などの使い方で、死者の霊という意味で鬼の字が用いられている。一方で、中国語では、「魔(モオ)」という語がある。これはインドのマーラを魔羅と音写したものの略で、悪魔とか魔物、魔王などの意味で、宗教的な悪の力を指していた。
一方のベトナムでは、妖怪の類を表現するときに、Ma(マー)とQuỷ(クイ)を用いることが多い。たとえば、舌の長いお化けはマーレー、首だけで臓器をぶら下げたマーライ、長い乳房のマーヴーザイなどはマーの系統だ。一方で、一本足の妖怪クイモッゾー、お盆のような丸い顔のクイマッマム、グールのようなクイニャップチャンなどはクイの系統だ。
漢字で書くとマーが「魔」、クイが「鬼」である。しかし、中国の漢字の用例からすると、ベトナムの用例は「魔」と「鬼」で反対になっている。すなわち、マー(魔)の方が死者の霊であり、クイ(鬼)の方が魔物、妖怪的な用例になっている。実は、ベトナムでは古来より、死者の霊のことをMa(マー)と呼んでいたらしい。マーというのは、ベトナム固有の語なのである。そのため、中国語の「魔」と「鬼」を輸入した際に、漢字のニュアンスが逆転してしまったのかもしれない。



