2026年4月11日 吸血鬼小説の源流をたどる:ポリドリからストーカーまで

吸血鬼小説の全体像を把握しようと思って、このところ、ポリドリの『吸血鬼』(1819年)、レ・ファニュの『カーミラ』(1872年)、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』(1897年)を立て続けに読んでいた。それぞれがギリシャ、モラヴィア(チェコ)、トランシルヴァニア(ルーマニア)の吸血鬼伝承を下地にしながら、現代的な吸血鬼を創作している点で非常に面白いな、と思っている。

たとえば、ポリドリの『吸血鬼』では、ギリシャの宿屋の娘のイアンテがギリシャ土着の吸血鬼ヴリコラカスについて語り、吸血鬼の恐怖を煽る。そこへ、イギリスからやってきた貴族のルスヴン卿(実はその正体は吸血鬼)が現れ、ギリシャの地でイアンテを襲う。

レ・ファニュの『カーミラ』では、吸血鬼カーミラが暗躍するのはオーストリアのシュタイアーマルク地方だが、すぐ北の隣国チェコのモラヴィアの貴族がかつて吸血鬼退治でシュタイアーマルクに招聘された話が出てきて、モラヴィアの吸血鬼伝承(ナヴラチレツ)を想起させる構造になっているのが面白い。

ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』では、ドラキュラ伯爵はトランシルヴァニア(ルーマニア)の古城を根城にしているが、現地ルーマニアの吸血鬼(ストリゴイ・モルツィ)の伝承を下敷きに創作している。オオカミへの変身、ニンニク嫌い、棺桶で眠る、杭で心臓を突き刺すなどの要素はストリゴイ伝承に由来する。

後続のドラキュラやカーミラは何度も映画化もされているし、吸血鬼としては非常に有名だ。ルスヴン卿は貴族的な吸血鬼の元祖にも関わらず、吸血鬼としてあんまり認知されていない気がする。もっともっと知名度を高めていった方がよいのではないか。

そんなことを考えながら、ウェブサイト「ファンタジィ事典」にルスヴン卿、ヴリコラカス、カーミラ、ナヴラチレツ、ドラキュラ、ストリゴイなんかを追加してみた。意外と、ストリゴイなんかは調べていて面白かった。2004年でも墓を暴いて心臓を取り出し、焼いて食べるという儀式が行われたというのは、結構、衝撃だ。