2015年6月3日 「だから一緒にやろう!」

ボクは現在、地理情報システム(GIS)の専門家としてナイジェリアに来ている。でも、実のところ、自分のバックグランドに、専門としてGISに関する部署に在籍して、GIS構築の業務に取り組んだ実績があるわけじゃない。すでに大昔に誰かが構築したGISを活用して仕事をした経験があるだけだ。つまり、利用者サイドにいても、製作サイドにいたわけじゃない。それなのに、今、こうしてナイジェリアの地で、GIS構築を指導している。

もちろん、ね。GISを見たことも使ったこともない彼らだ。ボクは使ったことがあるので、アドバンテージはある。でも、本当は、パソコンを使えるからと言って、パソコンを組み立てられるわけではない。それでも、パソコンを使ったことのない人よりは、上位に立てる。そんな感じ。その辺のモヤモヤした気持ちはある。

ボクが助言したことがそのまんま、彼らのGIS構築に反映されていく。そりゃあ、確かに、こういう出力があると便利だから、こういう情報を入れた方がいいとか、将来的にこういう風に活用していくから、こういう風に情報を整理した方がいいとか、利用者の視点を踏まえている点、適切なアドバイスにはなっていると思うけれど、本当のところ、もっと効率的に、うまくGISを構築していく方法って、あるのかもしれない。

たった一人でSuleiman氏と対峙して、二人で話し合って意思決定する。正直、しんどい。今日も、独断と偏見でGISの基本の縮尺を1/2000と決めた。図面の基準点もえいや、と決めた。ごちゃごちゃしていたので、衛星写真のレイヤを非表示にするという決断もした。これでいいのか、と悩むことだらけ。それなのに、少しずつ形になっていく。形になっていけばいくだけ、これでよかったのか、と不安になることばかりだ。

まだまだ作業は山積み。「大変だねえ」と呟いたら、Suleiman氏が「確かに困難だ。でも面白い。だから一緒にやろう!」と頷いた。何だか、ナイジェリアに来て初めて報われた気がするし、彼のためにも頑張ろう、と思った。

Suleiman氏とGIS

2015年6月14日 素敵な本との新しい出会い方

素敵な本と出会えるSNS「本のアプリStand」は秀逸だ、と思う。自分のタイムラインにはおすすめの本をちょっとしたコメントとともに投稿していく。本の裏表紙のバーコードをスマホで撮影すれば、すぐにおすすめが書ける。一方で、自分の前にはフォロワーのおすすめの本がずらり、と並ぶ。ちょっとしたコメントも書いてある。興味を惹かれた本をクリックすると、Amazonと紐づいていて、内容の確認が出来るし、気に入ったらそのまま購入も出来る。気になる本を取り敢えず保存しておくことも出来る。自分のアンテナだけでは引っ掛からなかったような本が、どんどんおすすめされる。読んでみたい衝動に駆られる。今まで出会わなかっただろう本と出会える可能性が無限大だ。よく出来たシステムだなあ、と思う。ナイジェリアにいなければ、きっと、今頃、本の衝動買いをしているだろう。素晴らしいSNSだと思う。

でも、「本のアプリStand」というネーミングだけはいただけない。

2015年6月27日 さようなら、ナイジェリア

本日、ナイジェリアより帰国。午前中、シェラトンホテルのプールサイドで残留メンバに事務的な申し送りと技術的な引継ぎをして、午後から武装警官とともに揺られて、ンナムディ・アジキウェ国際空港へ移動する。

途中、空港までの送迎のドライバと助手席に座る武装警官が、高速道路の料金の支払いを巡って料金所の職員と揉めている。「払わないと通れない」「払う必要はない」などと侃侃諤諤やっていて、いつまで経っても進まないので、ボクが「いくらだ? こちらで払う」と伝えると、ドライバが「もう少しで押し切れる。待て」などと言う。乗客は日本人だとか、大使館がどうだとか、そんなことで押し問答を繰り広げている。そのうちゲートが開いた。ドライバと武装警官が大喜びでハイタッチ。「料金所の職員には悪いことをした」「ラッキィだった」などとゲラゲラ笑っている。困ったものである。

空港では、出国の際に「スーツケースにビールが2本入っている。開けろ」とイチャモンをつけられる。「2本はダメなの? 3本までではなかった?」と訊くと「いいから何か寄越せ」と開き直って手を出してくる。どうやら通りたければ賄賂を払えということらしい。出国カードも職員が群がって来て「俺が書いてやる」「俺が書いてやる」などと言って金品を要求してくる。荷物検査のときはひどくて「財布の中身も見せろ」「中身を分けてくれ」と直裁だ。空港職員、腐敗しているなあ。困ったものである。

それでも、1か月半のナイジェリア生活もこれでお仕舞いだ。ようやく日本に帰ることができる。