ゼウス

[ギリシア・ローマ神話]

名称Ζεύς(ゼウス)【古代ギリシア語】
繧 Jupiter(ユーピテル),Juppiter(ユーッピテル)【ラテン語】
容姿白髭を生やしたたくましい男性神。
特徴ギリシア・ローマ神話の主神。最高神。
出典ヘーシオドス『テオゴニアー(神統記)』ほか

ギリシア神話の最高神!?

ゼウスはギリシア・ローマ神話の最高神。雷を司る天空神で、オリュムポスの神々を率いる王。ローマ神話ではユーピテル。神々の王クロノス(Κρόνος)とレアー(Ῥέα)の末子で、ヘスティアーデーメーテールヘーラーハーデースポセイドーンとは兄弟。多くの女神や人間の女性などと交わり、多くの子孫を残している。

ゼウス、クレータ島でこっそりと育てられる!?

ゼウスが生まれる前は、クロノスが天界の王であった。クロノスはレアーとの間にヘスティアー、デーメーテール、ヘーラー、ハーデース、ポセイドーンなどの子供をもうけていったが、自分の子供に天界の支配権を奪われるという予言を恐れ、生まれてくる子供たちを次々と呑み込んでいった。というのも、クロノス自身も過去に父親で天空神のウーラノスを倒してこの天界の支配権を得ていたのだ。しかし、子供たちを呑みこむという行為をレアーが快く思うはずもない。あるとき、レアーは、ゼウスが生まれたときに、石に産衣を着せると、それを赤子だと偽ってクロノスに飲み込ませた。そして、こっそりとゼウスをクレータ島へと運ばせると、そこで島の精霊たちにゼウスをこっそりと育てさせた。精霊たちは雌ヤギであるアマルテイアの乳を赤子に飲ませ、赤子が泣き出すと、武装した精霊クーレースたちが槍と盾を打ち鳴らしてその泣き声が聞こえないようにした。

ゼウス、父親を追放し、天界の王となる!?

こうして、クロノスの知らないところで立派に成長したゼウスは、父親に復讐を果たすべく、知恵の女神であるメーティスから薬をもらうと、それをクロノスに飲ませ、呑み込んだ兄弟たちを全て吐き出させた。また、過去にウーラノスによってタルタロスに幽閉されていた一つ目巨人のキュクロープス、百腕巨人のヘカトンケイルらを助け出して、味方につけると、父親率いるティーターン族に戦争を仕掛けた。ゼウスとその兄弟たちはオリュムポス山に、クロノスらティーターン族はオトリュス山にそれぞれ陣を敷いた。ヘカトンケイルたちは100本ある腕で次々と岩を掴んでティーターン族に投げつけた。キュクロープスらはゼウスに雷霆(ケラウノス,Κεραυνός)を、ポセイドーンに三叉の戟(トリアイナ,τρίαινα)を、ハーデースに隠れ兜(アイドス・キュネーン,Ἄϊδος κυνέην)を与えた。神々はこれらの武器を使ってティーターン族を征服し、タルタロスへ幽閉してしまった。

ゼウスたちはそれぞれが支配する領域を決めるために籤(くじ)を引いた。その結果、ゼウスが天空、ポセイドーンが海、ハーデースが冥府を支配することとなった。こうして古きティーターン族の支配の時代は終わり、ゼウスらが率いるオリュムポス一族の時代が始まったのである。

ゼウスは浮気性!?

ゼウスは非常に好色の神さまとして知られている。女性を見ると見境がなく、気に入った女性がいると、女神でも人間の女性でも、次々に関係を持って子孫を残していった。

最初に知恵の女神メーティスと交わった。しかし、メーティスとの間に生まれる息子がゼウスの支配権を奪うという予言を受けたので、メーティスが身籠ると、ゼウスはメーティスごと呑み込んでしまった。こうしてゼウスは知恵を自分のものとし、その上、将来の災いの芽を摘んだ。やがて、メーティスが身籠った娘はゼウスの頭の中で成長し、額を突き破って生まれてきた。それがアテーナーである。

次に掟の女神であるテミスと交わって、季節の女神ホーラたちと運命の女神モイラたちをもうけた。エウリュノメーからは優雅女神カリスたちを、記憶の女神ムネーモシュネーからは芸術の女神ムーサたちを、レートーからはアポッローンアルテミスを、デーメーテールからペルセポネーをもうけた。また、ヘーラーを正妻として青春の女神ヘーベー、出産の女神エイレイテュイア、アレース及びヘーパイストスをもうけた。また、ニュムペーのマイアからはヘルメースをもうけている。それから、人間のセメレーとの間にもうけた子供はディオニューソスである。

このほかにも、ゼウスはニュムペーや人間の女性と交わり、さまざまな英雄や王族、都市の祖先などを生み出している。伝説の英雄たちは神々の系譜と結びつきやすい。人間の女性ダナエーとの間に英雄ペルセウス、アルクメーネーとの間に英雄ヘーレクレースが生まれている。他にも多くの英雄たちがゼウスの系譜に結び付けられていった。また、諸国の王族たちも自らの祖先の出自をゼウスに求めた。同様に、それぞれの都市の祖先も、次々とゼウスと結び付けられていった。このため、ゼウスは非常に多くの女性たちと交流を持ち、子孫を残さなければならなくなった。結果として、ゼウスの系譜は非常に複雑になっており、また、好色な神さまになっていく。

神話の中で、正妻ヘーラーは非常に嫉妬深い女神として描かれていて、ゼウスが交わった女性たちやその子孫はその後、ひどい迫害を受けている。ヘーラーの怒りを恐れ、ゼウスは自らを白鳥や雨に姿に変えたり、女性を牛に変身させたり、黒雲で姿を隠したりとさまざまな涙ぐましい工夫を凝らし、ヘーラーの目を誤魔化して、女性に近づくのである。しかし、大抵の場合、それはすぐに露呈し、女性やその子供たちはヘーラーの手痛い迫害に晒されることになる。

《参考文献》