2026年3月8日 吸血鬼の系譜を辿り始めた日
2月1日の記事『薔薇色の月』でも言及したが、ファントムシータの『薔薇色の月』は吸血鬼カーミラをモチーフにした楽曲らしい。それならば、ちょっと『カーミラ』でも読んでみようかと思いつつ、変に熱心なボクは「吸血鬼の元祖であるポリドリの『吸血鬼』から順番に読まなければ」という不思議な正義感が芽生えてしまう。そんなわけで、早速、ジョン・ポリドリ(John William Polidori)の怪奇小説『吸血鬼(The Vampyre)』(1819年)を読んでみた。
粗筋としては、若き英国紳士オーブリー(Aubrey)が主人公で、社交界の場で謎めいたルスヴン卿(Lord Ruthven)と出会い、彼に魅了される。血の気のない青白い顔で無表情、それでいてどこか魅惑的な彼の正体は、果たして吸血鬼であった。
物語はロンドンの社交界から始まり、二人の旅はローマを経てギリシャへ向かう。そこでギリシャの吸血鬼ヴリコラカスの伝承を聞かされる。オーブリーは古い迷信だと切り捨てるが、実際に宿屋の娘イアンテは吸血鬼に襲われて殺されてしまう。さらに山賊に襲われてルスヴン卿は死ぬ。失意のうちにロンドンに帰国したオーブリーだったが、しばらくして、生前と変わらぬ姿のルスヴン卿が現れる。どうやら彼がオーブリーの妹を狙っていることが発覚し……。
『吸血鬼』はざっくり言うと、そんな物語である。社交界で異彩を放っていた謎めいた紳士が、実は吸血鬼だったという展開は、今となってはよくあるものだが、こうした“貴族的吸血鬼”というイメージはポリドリの創作であり、後の吸血鬼像(カーミラやドラキュラ)に受け継がれていく。まさに革新的だったわけである。
結局、ルスヴン卿の正体が世間に公になった頃には、オーブリーはすでに死んでいる。妹も犠牲になり、ルスヴン卿も姿を消している。その後、彼がどうなったのかをポリドリは語らない。吸血鬼は別の場所で名前を変え、その社会に溶け込んでいくのかもしれない。いずれにしても、不気味な終わり方である。
さあ、次はいよいよ念願のレ・ファニュの『カーミラ』(1872年)だ。頑張って読むぞー。おーッ!!





