シーレーノス

[ギリシア・ローマ神話]

名称Σιληνός〔Sīlēnos〕(シーレーノス),Σειληνός〔Seilēnos〕(セイレーノス)【古代ギリシア語】
容姿上半身が男性、下半身がウマ。ウマの耳と尾を持つ。太鼓腹で毛むくじゃらの醜い老人。
特徴古代ギリシアの山野の精霊。ディオニューソス神の養育者で、彼の放浪に同行する。知恵者で彼を捕らえた人間に知恵を授ける。

半人半馬の酔っ払い爺さん!?

シーレーノスはギリシア・ローマ神話に登場する山野の精霊。上半身が男性、下半身がウマの姿で、ウマの耳と尾を持っている。ヘルメースの子、あるいはパーンの子とされ、大抵の場合、でっぷりした太鼓腹を持つ毛むくじゃらの醜い老人の姿で描かれる。ブドウ酒の神さま・ディオニューソスに付き従ってギリシア各地を放浪し、酒を造っては飲み、酔っぱらいながら踊りを踊り、サテュロスたちと一緒になってニュムペーたちを追い掛け回した。サテュロスたちのリーダーとも考えられる。ときには畏れ多くもイーリスヘーラーなどの女神たちにまで手を出したとされる。

しかしながら、実はものすごい知恵者!?

シーレーノスは酔っ払った姿で描かれることが多いが、その実、知恵者で、幼いディオニューソスを養育したとされ、ディオニューソスからは師として仰がれている。

また、シーレーノスを捕らえた者は知恵を得られると信じられていた。実際にシーレーノスを捕らえた人物として、プリュギア(現在のトルコ)のミダース王が知られている。ミダース王は立派な庭を持っていて、そこにシーレーノスがしばしば訪れるのを知ると、泉に酒を入れて酔っ払わせてシーレーノスを捕らえたと伝えられている。シーレーノスがミダース王にどのような知恵を授けたのかは定かではない。アリストテレースは「人生は苦難で、生まれることは災いだ」と教えたと伝えている。また、アイリアーノスは、この世界の外にある2つの国の話をしたと伝えている。それによれば、この世界の外には、幸福に一生を送るエウセベース国と、莫大な金銀を所有しているマキモス国があって、彼らが我々の世界を訪問したという。彼らは、我々の世界で最も幸福な民族だと信じられているヒュペルボレイオス族を見て、その憐れな様子を見て自分たちの国に帰っていったというのである。また、別伝ではミダース王は酔っ払って庭に迷い込んだシーレーノスを10日間歓待し、これに喜んだシーレーノスはどんな願いでも叶えることを約束し、ミダース王は手で触れたものが全て黄金になるような能力を所望したという。そして王が食事をしようとしたところ、食事が黄金に変わったのを見て絶望したとされる。

この後、ミダース王はディオニューソスに元に戻してくれるように懇願し、ディオニューソスはパクトーロス河で身体を洗うように教える。すると、この不思議な力は河に移ったという。このため、パクトーロス河ではたくさんの砂金が採れるのだという。

シーレーノスはしばしばサテュロスと混同される。実際にシーレーノスとサテュロスの区別は非常に曖昧ではあるが、一般的には、サテュロスは若者で描かれ、山羊と結び付けられるが、シーレーノスは老人であり、ウマに結び付けられる。その容姿から、シーレーノスの原型をエジプトの守護霊ベスに求める学者もいる。

《参考文献》