ニュクス

分 類ギリシア・ローマ神話
名 称 Νύξ 〔nyx〕(ニュクス)《夜》【古代ギリシア語】
容 姿女神。詳細不明。
特 徴夜を擬人化した女神。
出 典ホメーロス『イーリアス』(前8世紀)、ヘーシオドス『テオゴニアー』(前7世紀)など

ニュクスはギリシア・ローマ神話の夜の女神。世界の始まりに誕生した古い女神で、最高神であるゼウスにも畏れられている。

夜の女神、闇とともにこの世の裂け目から誕生する!?

紀元前7世紀の詩人ヘーシオドスが『神統記(テオゴニアー)』の中で語るギリシア神話の世界の始まりの神話によれば、最初にこの世に誕生したのはカオス(穴)で、続いて、その穴の中にガイア(大地)、タルタロス(奈落)、エロース(性欲)が自然発生的に誕生した。

その後、カオスからエレボス(闇)と共に誕生したのがニュクス(夜)である。ニュクスはエレボスと交わって、正反対の性質を持ったヘーメラー(昼)とアイテール(光)を産んだ。

ヘーシオドスは、何もなかった世界に、まずはぽっかりと穴、あるいは裂け目が生じ、その裂け目に我々の立つ大地、穴の底には奈落、そして全てを結び付けて子孫を殖やす性欲が誕生し、それと同時に、穴の中から夜と闇が誕生し、そこから正反対の昼と光が誕生したのだと世界の始まりを説明している。

夜の女神、次々と不吉な概念を生み出す!?

ニュクスはこの世に生まれると、単独で次々と不吉な概念を生み出していく。モロス(非運)、ケール(破滅)の一族、タナトス(死)、ヒュプノス(眠り)、オネイロス(夢)の一族、モーモス(非難)、オイジュス(苦悩)、ネメシス(義憤)、アパテー(欺瞞)、ピロテース(愛欲)、ゲーラス(老い)、エリス(争い)である。

昼と夜は、交代で任務に就く!?

ニュクスの館は西の果ての地下深くにあり、ヘーメラー(昼)と共用している。ただし、決してニュクスとヘーメラーは同時に館には留まれない。一方が館から外に出て、大地の上を巡っているときには、もう一方は館に留まって、自分の旅立ちを待つ。昼はヘーメラーが光を引き連れて館を出て大地の上を巡り、夜になるとニュクスがヒュプノス(眠り)を引き連れて館から出て、大地の上を巡るのである。

夜の女神、ゼウスをも畏れさせる!?

ニュクスは最高神ゼウスにも一目置かれている。これはホメーロスの『イーリアス』の記述からも読み取れる。あるとき、ニュクスの息子のヒュプノス(眠り)は、ヘーラーの指示を受けて、ゼウスを眠らせ、激怒させたことがある。ゼウスはヒュプノスを探し回って暴れたが、ヒュプノスは何とかニュクスの館に逃げ込んだ。すると、ゼウスもニュクスを不快にすることは憚られると怒りの矛を収め、諦めたという。

神話の中では、ニュクスはゼウスにさえ恐れられて尊ばれているのである。

《参考文献》

Last update: 2021/10/01

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