エロース

[ギリシア・ローマ神話]

名称 Ἔρως(エロース)《愛》【古代ギリシア語】
Amor(アモル)《愛》、Cupido(クピードー)《欲求》【ラテン語】
容姿有翼の青年神。後代には有翼の子供。
特徴ギリシア・ローマ神話の愛の神さま。世界の始まりから存在する青年神。ただし、後代になるとアプロディーテーに従う幼児の姿になった。黄金の矢で射て、恋心を掻き立てる。また鉛の矢で射ることで、相手を嫌悪させることもできる。
出典出典:ヘーシオドス『テオゴニアー』(紀元前7世紀)ほか

四肢を萎えさせる愛欲の神さま!?

エロースはギリシア・ローマ神話に登場する愛の神さま。恋い焦がれる感情を神格化した神さまで、ローマ神話ではアモル、あるいはクピードーに対応している。後代になると、クピードーは幼児化して、翼を生やした子供のような姿になったが、元々は有翼で髭を生やしたたくましい青年神である。エロースは弓矢を持った姿で描かれる。

ヘーシオドスが『テオゴニアー』の中で語る創世神話にでは、カオス(穴っぽこ)やガイア(地)、タルタロス(奈落)と一緒に、世界の始まりから存在した原初神であるとされている。神々がどんどん殖えていくためには、愛による結びつきが必要だ、ということなのだろう。エロースはあらゆるものを結びつける存在として描かれる。

オルペウス派では、エロースをあらゆるものを結びつける存在として、原初神に据えている。この世界の始まりには卵だけがあり、この宇宙卵が割れてエロースが誕生し、割れた卵の上半分は天空に、下半分は大地になったという。

エロースは後代になると、幼児化するとともに、愛と美の女神アプロディーテーと結び付けられ、アプロディーテーの子とされるようになった。

黄金の矢で愛を引き起こし、鉛の矢で愛を嫌悪!?

黄金の矢で射られたものは激しい愛情に憑かれ、鉛の矢で射られたものは恋を嫌悪するようになる。エロースはアポッローンに弓矢の能力をバカにされ、復讐としてアポッローンを黄金の矢で射た。たまたま目の前にはダプネーがいて、アポッローンはダプネーに恋い焦がれたが、エロースはダプネーを鉛の矢で射たため、ダプネーはアポッローンを嫌悪して逃げ回った。アポッローンに追い詰められて逃げ場をなくしたダプネーは父である河神ラードーンに頼んでその身を月桂樹に変えてもらった。以降、アポッローンは月桂樹を自らの象徴とした。このように、エロースの矢の効力は神々ですら抗えないのである。

エロースとプシューケーの恋物語!?

エロースと人間の娘プシューケーの恋の物語も知られる。人間界でプシューケーが絶世の美女と噂になり、アプロディーテーはこれに嫉妬し、プシューケーが子孫を残さないように鉛の矢で射るようにエロースに命じた。しかし、エロースはプシューケーの寝顔の美しさに見惚れて誤って黄金の矢で自分の足を傷つけてしまう。こうして、エロースはプシューケーに恋をしてしまう。魔物に化けたエロースは両親に、プシューケーを生贄に捧げるように言うと、プシューケーと同居した。しかし、神であることを悟られないように暗闇の中でしかプシューケーと会わなかった。あるとき、プシューケーに灯りを当てられると、エロースは逃げ去った。しかし、プシューケーもエロースの美しい姿に恋をした。プシューケーはアプロディーテーの出す難題を解くために冥界に行くなどして、エロースと再会する。

プシューケーというのは古代ギリシア語で《魂》という意味であるが、これはアプレイウスが『アシヌス・アウレウス(黄金の驢馬)』の中で語った物語で、「愛」と「心」の関係を象徴的に表現した神話である。

《参考文献》