エインセル

分 類イギリス伝承(イングランド伝承)
名 称 Ainsel(エインセル)《自分自身》【英語】
容 姿小さな少女の妖精。
特 徴夜、人間の子供と遊ぶ。
出 典

妖精の名前は《自分自身》!?

エインセルはイングランドの伝承に登場する妖精。エインセルとは《自分自身》を意味する。

夜、ある男の子がなかなか寝床に入らないので、母親は「あんまり遅くまで起きていると妖精に連れていかれるよ」と言うと先に一人で寝てしまった。男の子が遊んでいると、煙突から小さな少女の妖精が現れた。彼女が「私はエインセル」と名乗ったので、男の子は「僕も僕自身(エインセル)さ」と答えた。そして、二人は一緒に遊んだ。暖炉の火が弱まったので、男の子は火かき棒で火をかき起こしたところ、燃え殻が跳ねてエインセルは足を火傷した。エインセルが大声を上げ、煙突からものすごい勢いで妖精の母親が現れた。ビックリした男の子は薪の後ろに隠れた。「一体、誰にやられたんだい」と妖精の母親が恐ろしい顔で尋ねると、エインセルは「エインセル(私自身)だ」と答えた。妖精の母親は「何だい、自分が悪いんじゃないか!」とエインセルを煙突の上に蹴り飛ばしたという。

英雄は《誰でもない》と名乗った!?

似たような話は古くからあり、たとえば、ギリシア神話では、英雄オデュッセウスが一つ目巨人のポリュペーモスに囚われたときに「ウーティス(誰でもない)」と名乗っている。オデュッセウスがポリュペーモスの目を潰して逃げしたとき、ポリュペーモスの仲間たちが集まってきて「誰にやられたんだ!」と騒ぎ立てたが、ポリュペーモスが「誰でもない(ウーティス)」と答えるばかりだったため、みんな、帰ってしまったという。

《参考文献》

  • 『妖精 Who's Who』(著:キャサリン・ブリッグズ,訳:井村君江,ちくま文庫,1996年〔1979年〕)
  • 『妖精事典』(編著:キャサリン・ブリッグズ,訳:平野敬一/井村君江/三宅忠明/吉田新一,冨山房,1992年〔1976年〕)

Last update: 2024/04/26

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