クミホ

分 類韓国伝承
名 称 구미호gumiho〕(クミホ)《九尾狐》【韓国語】
容 姿9つの尾をはやしたキツネ。
特 徴人間の肝臓を喰らい、人間になろうと画策する。
出 典

九尾狐は韓国の出身!?

クミホは韓国伝承に登場する妖怪で、漢字の「九尾狐」を韓国語読みしたもの。九尾狐は元来、中国起源の妖怪で、その最古の記録は『山海経』で、青丘山に棲む9本の尾を持つ人喰いのキツネだと説明されている。そして、九尾狐を食べると邪気を退けられるといい、古代には泰平の世に出現する瑞獣と解釈されていた。

ちなみに、『山海経』で言及されている「青丘」というのは、中国から見て東方にある伝説の国とされていて、山東半島、あるいは遼東半島だとされることが多いが、一説では、朝鮮半島だとも解釈されている。あくまでもその説を採れば、九尾狐は朝鮮半島の出身ということになる。

クミホは人間になりたい!?

九尾狐と言えば、中国では妲己として紂王を魅了し、日本では玉藻前として鳥羽上皇に寵愛されるなど、美女に化けて神通力を駆使して、時の権力者を堕落させるイメージがある。

韓国でも、美女に化けて男性を誘惑する存在である点は変わらない。しかし、韓国では、クミホは人間になることを望んでいるようだ。そして、1000人分の心臓または肝臓を喰らうことで人間になれるのだという。長寿の妖怪であるクミホがどうして短命な人間になりたがるのかはよく分からないが、いずれにしても、韓国の九尾狐は、人間になるために次々に男性を誑かし、その肝臓を喰らうのである。

面白いのは、ときどき、クミホは人間を誘惑しているうちに、情にほだされ、本当に人間と恋仲になることもある。ここが韓国の九尾狐のオリジナリティのあるところで、魅力的なところである。

15世紀に韓国に実在したとされる学者の田禹治(전우치、チョンウチ)は、クミホに愛されたという伝説が残っている。チョンウチが危機に瀕したとき、クミホは九尾の狐の姿に戻って彼を守り、死ぬ直前に狐珠を渡した。この狐珠を口にしたチョンウチは神通力を得て、その後、道士として活躍したとされる。

このように、韓国のクミホは人間を喰らう恐ろしい存在でありながらも、人間との悲恋譚もあり、後世、多くの創作作品のモチーフとなった。代表的なものとしては、映画『KUMIHO/千年愛』(1994年)、ドラマ『僕の彼女は九尾狐<クミホ>』(2010年)などがある。

クミホは狐珠を持つ!?

クミホの持つ狐珠を口にしたチョンウチが道士になったように、クミホの狐珠には特殊能力がある。秦國泰(진국태、チン・グクテ)という人物にまつわる韓国の伝説では、若かりし頃、チン・グクテは隣の村の書堂まで通って勉学に励んでいると、帰り道の小屋で美しい女性に出会う。女性は不思議な珠を持っていて、その珠で口遊びをするように誘ってきた。女性は珠を口に含むとグクテの口に運び、グクテも同じように珠を彼女の口に運ぶ。やがて、グクテは連日、この女性との口遊びに興じるようになる。しかし、次第にグクテは衰弱していった。これを不審に思ったのは書堂の訓長で、グクテを問い質す。そして、事情を理解した訓長は「その珠を呑んで、天・地・人を眺めれば、万物に通じられる」と説明した。グクテは、次に女性と会ったとき、訓長の言うとおり、珠を呑み込んだ。その瞬間、女性は九尾の狐の姿になった。驚いたグクテは一目散に書堂まで逃げ出し、訓長の元に駆け寄った。「ちゃんと天・地・人を眺めたか」と問われて、初めてグクテは訓長の姿を眺めた。

結局、チン・グクテは、天と地には通じることができなかったが、人には通じることができ、医術に長け、その後、さまざまな病を治療することができたという。

《参考文献》

Last update: 2023/07/16

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