エアリアル

[ヨーロッパ伝承]

名称Ariel(エアリアル)【英語】
特徴大気の精霊。嵐を自在に操る。
出典ウィリアム・シェイクスピア『テンペスト(The Tempest)』(17世紀)、アレクサンダー・ポープ(Alexander Pope)『髪盗人(The Rape of the Lock)』(18世紀)ほか

自由自在に嵐を操る妖精、復讐劇に加担する!?

エアリアルはシェイクスピア(William Shakespeare)の戯曲『テンペスト(The Tempest )』に登場する大気の精霊である。魔女シコラクスに木の中に閉じ込められていたのを魔術師プロスペローに助けられたことから、彼の命に従い、彼の復讐の協力をする。

プロスペローは元々、ミラノ大公だったが、12年前に弟のアントーニオーらによって地位を追われ、現在は孤島で娘のミランダと一緒に暮らしていた。一方、大気の精エアリアルはこの島の魔女シコラクスによって使役されていたが、使い物にならないということで、12年間の間、松の木の裂け目に幽閉されていた。魔女はその間に死んでしまったが、エアリアルはプロスペローに救われ、彼の使い魔となった。プロスペローの命を受けたエアリアルは、激しい嵐を起こしてミラノ大公アントーニオーとナポリ王アロンゾーを乗せた船を難破させ、プロスペローの住む孤島へと船を導く。こうしてプロスペローの復讐劇が始まるわけだ。途中、ナポリ王の息子ファーディナンドとミランダの恋愛があったり、島に棲む怪物キャリバンが暗躍したり、アントーニオーがアロンゾーの殺害を企てたりといろいろあるのだが、最終的にプロスペローが弟のアントーニオーらを許して幕となる。エアリアルはその間、プロスペローの命令を忠実にこなしていく。そしてプロスペローに解放されて晴れて自由の身になって空へと帰っていくのである。

「テンペスト」というのは《嵐》のことで、劇の表題にもなっているとおり、エアリアルは激しい嵐を起こしてアントーニオらの乗っている船を難破させ、プロスペローの住む孤島に漂着させた。エアリアルは妖精らしく、火の玉に化けて乗組員たちを混乱に陥れる。また、魔法で彼らを眠らせたりもする。また、激しい風で船を孤島に誘導したが、島に漂着した乗組員たちは髪の毛一本も失うことはなかったというから、風は完全にエアリアルによってコントロールされていたようだ。また、ハルピュイアに化けてみせるなど、さまざまな幻術を見せて、アントーニオーやアロンゾーを誑かし続けた。

エアリアル、もともとは天使だった!?

エアリアルは《神の獅子》というヘブライ語אֲרִיאֵלに由来しているようで、もともとはユダヤ教やキリスト教の天使だったようだ。しかし、次第にair(エアー)《空気》などからの連想から、大気の精霊になっていたようだ。11世紀には大気の中に棲む悪魔の一段として「Aerials(アエリアルズ)」という言葉が登場している。ミルトン(John Milton)は『失楽園(Paradise Lost)』(1667年)の中で、語源どおり堕天使として登場させている。

アレクサンダー・ポープ(Alexander Pope)はエアリアルを空気の精霊シルフと同一視し、『髪盗人(The Rape of the Lock)』の中で主人公の令嬢ベリンダの守護精霊の1人として登場させている。

《参考文献》