赤舌(アカジタ)

[日本伝承]

名称赤舌(アカジタ)、赤口(アカクチ)【日本語】
容姿口を大きく開けた獣の姿。全身は黒雲に覆われて見えない。大きな舌がある。
特徴夜中に下流の村人たちのために水門を開く。
出典鳥山石燕『画図百鬼夜行』、佐脇嵩之『百怪図巻』ほか

大きく口を開いた謎の妖怪!?

赤舌(アカジタ)は鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれている妖怪。同じような妖怪が『化物づくし』や『百怪図巻』、『化物絵巻』、『百鬼夜行絵巻』などの妖怪絵巻にも描かれており、赤口(アカクチ)という名前で呼ばれている。

どの妖怪画にも説明文はないため、具体的にどのような妖怪なのかは分からないが、それらの絵には、鋭い爪を生やした腕と毛深い顔を持った妖怪として描かれている。周囲は黒雲のようなもので覆われているため、顔と腕以外は見えないため、全身がどのようになっているのかは窺い知ることができない。大きく口を開いていて、口の中には大きな舌がある。

『画図百鬼夜行』の鳥山石燕の絵には、水門から水が流れ出している様子が描かれているため、水門の番をする妖怪とされるが、絵からの連想に過ぎない。

陰陽道における赤舌神・赤口神!?

ちなみに陰陽道には赤舌神とか、赤口神という神さまがいる。

赤舌神は太歳神の王都の西門の番神で、六鬼の鬼神を使役するという。そして、この六鬼に一日交代で守護させるという。三番目の羅刹神は横暴な神であるため、この鬼神が支配する日は赤舌日と呼ばれ、凶日であると考えられた。

一方、赤口神は太歳神の王都の東門の番神で、八鬼の鬼神を使役するという。そして、その八鬼に一日交代で守護させるという。四番目の八嶽卒神は八面八臂の凶神であるため、この鬼神が支配する日は赤口日と呼ばれ、凶日であると考えられた。

これらの考え方が六曜信仰に取り入れられて、現在の赤口になっている。

下流の村人のために水門を開く心優しい妖怪!?

山田野理夫は『東北怪談の旅』(1974年)の中で、赤舌という妖怪について書いている。それによると、赤舌が青森県津軽の農村に現れて、水争いを解決したという。ある旱魃(かんばつ)の年に、用水路の上流にある村人たちが水を独占しようとして水門を閉めてしまったという。しかし、何度閉め切っても、夜の間に水門が開いてしまう。これは下流の村のために赤舌がこっそりと水門を開けていたからだったという。

この物語は、おそらく、元々あった水争いの伝承に、赤舌が後付けされたものであると考えられている。おそらく鳥山石燕の絵に着想を得た山田の創作であろう。