ユニコーン

分 類ヨーロッパ伝承
名 称 Μονόκερως(モノケロース)《一本角》【古典ギリシア語】
Unicornis(ウーニコルニス)《一本角》【ラテン語】
Unicorn(ユニコーン)《一本角》【英語】
容 姿額に一本角を生やした獣。一角獣。
特 徴獰猛。毒を治す。乙女に弱い。
出 典クテーシアス『インド誌』(前4世紀),プリーニウス『博物誌』ほか

一本の角をはやした獰猛な怪物!?

ユニコーンは額から一本の角をはやした美しい白馬の怪物である。日本では「一角獣」などと訳される。聖獣として幻想的な姿で想像されることが多いが、初期の頃は現在のイメージとは似ても似つかぬ怖ろしい怪物で、古代ローマには、非常に獰猛で残酷な猛獣として描かれることが多かった。プリーニウスの『博物誌』によれば、胴体はウマ、頭は雄シカ、脚はゾウ、尾はイノシシのようで、黒い角は1メートルほど。噛みついたり、脚で蹴っ飛ばしたり、額の角でゾウさえも一撃で刺し殺すとされていた。生け捕りにするのは非常に難しいという。

紀元前4世紀のクテーシアスの『インド誌』(45節)やアイリアノスの『動物の本性について』(4巻52章)では一本の角をはやした野生のロバと説明されていて、角の持つ解毒作用について述べられている。ユニコーンの角でつくった盃で飲み物を飲んだ人間はさまざまな病にかからなくなるとされ、また、すでに飲んでしまった毒をも治癒してくれると説明されている。この角が持つ効果のために、ユニコーンを捕らえようとする人も多かったという。実際、中世ヨーロッパではイッカクの牙がユニコーンの角として売買されていた。ユニコーンは処女には心を許すとされ、乙女の膝枕で眠っているところを捕獲すればいいとされ、しばしば乙女とともに描かれた。

ユニコーンが気高く美しい聖獣になったのは中世以降で『フィシオロゴス』による影響が大きい。獰猛ながら汚れなき乙女の前では従順になるという、まさに中世の騎士道精神に相応しい獣とされるようになっていった。

《参考文献》

Last update: 2011/05/03

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