百々爺(モモンジイ)

百々爺(モモンジイ)【日本語】
分 類日本伝承
容 姿正体不明。尾や毛の生えた妖怪。
特 徴江戸時代で子供たちが言う「妖怪」のこと。百々爺に食べられると脅しに使われた。
出 典鳥山石燕『今昔画図続百鬼』ほか

百々爺は妖怪の児童語!?

百々爺(モモンジイ)は正体不明の妖怪。おそらく子供たちが妖怪のことを言う言葉で、親たちにも「早く寝ないと百々爺に食べられちゃうぞ」とか「泣き止まないと百々爺に食べられちゃうぞ」などと脅しの文句として使われていたのだろう。江戸時代から大正時代にかけては、夜、突然人を襲うとされた。夜道を歩いている人間の松明や提灯の火をふっと吹き消すともいう。闇の中を飛翔し、ガアガアと気味の悪い声で鳴くともされ、モモンガとかモモンジ、あるいは「晩鳥」などとも呼ばれるという。

鳥山石燕は『今昔画図続百鬼』の中で、長い杖を持った老人の姿を描いている。夜、風の強い日に原っぱをうろついていて、出会った人間を病気にするなどと説明されている。

百々爺未詳。愚按ずるに、山東に模捫窠(モモンガ)と称するもの、一名野襖ともいふとぞ。京師の人小児を怖しめて啼を止めるに元興寺(がごじ)といふ。ももんぐはとがごし、ふたつのものを合わせて、ももんぢいといふ欤。原野夜ふけてゆきたえ、きりとぢ、風すごきとき、老夫と化して出で遊ぶ。行旅の人これに遭へば、かならず病むといへり

(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』「百々爺」より)

どうやら、関東地方や中部地方ではモモンガといえば動物であると同時に妖怪を指す児童語だったという。京都では元興寺(ガゴジ)という言葉がこれに該当し、泣く子供たちを黙らせるために用いられていたようだ。モモンジイというのは、鳥山石燕によれば、このモモンガという語とガゴジという語が合わさった語ではないかという。実際、東京や神奈川、山梨や静岡県東部などではモモンジイという言葉は妖怪の児童語として知られていたようだ。それだけでなく、尾のはえたものや毛深いもののことを嫌って「モモンジイ」などと呼んだようで、シカやイノシシの肉なども「モモンジイ」と呼んでいたという。こういう肉を売る店のことを「モモンジ屋」と言ったらしい。モモンガやムササビが歳月を経ると百々爺という妖怪になるともされている。

《参考文献》

Last update: 2009/08/02

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