2020年5月6日 個人情報過多では?

新型コロナウイルスが猛威を振るって、人々は殺気立っているらしい。感染を確認したにも関わらず、山梨県から高速バスに乗って帰ってきた女性を特定班が特定して名前も職場も顔も晒している。

このご時世だから、彼女を擁護することは難しい。味覚と嗅覚がおかしくなった時点で、バーベキューに行くのを取り止めることが最初の決断だっただろうし、ちょっとズルいのかもしれないけれど、東京に帰ってくるまでは何が何でもPCR検査を受けないという選択肢もあった。検査結果が出て、東京に戻るのを止めるのも決断だったし、虚偽の申請をしないで正しい申告をすべきだった。いずれにしても、いろいろな段階で選択を誤っている。

ただ、ボクが一番、感じるのは、個人情報保護を重んじる自治体が、新型コロナウイルスの議論のときだけ、どうして個人情報への配慮を怠るのか、という点だ。マスコミの報じ方もそう。たとえば、年齢。年配者が掛かると重篤化するとか、いやいや若い人も重篤化するなど、議論のためには、情報として「年齢」は重要だ。感染者の移動経路や行動も、濃厚接触者特定のためには必要だし、注意喚起が必要だ。それは分かる。ただ、「山梨から東京に高速バスで帰った20歳代の女性」というのは、非常に個人情報過多だ。本来、年齢、性別、移動経路などは切り分けて発表することもできる。1件案件ごとに詳細を報告するのはなく、年齢や性別、持病の有無などは統計的に処理をすればよい。累積で積み上げていって、誰が誰だか分からなくする工夫はできる。そして、注意喚起のために移動経路や行動を報告すればいい。たとえば、今回の件で言えば「山梨から統計に高速バスで移動した感染者が1名」という事実のみを発表し、年齢、性別などは伏せておいて、統計資料の中で女性を1名、20代を1名、追加すればいい。

こうやって、個人情報の塊を次から次へと発表して、感染者を負い込んでいくから、虚偽申請をしたり、感染が疑われるのに黙って我慢してしまったりする。うっかりPCR検査だって受けられない。ここに、問題がある、とボクは感じている。配慮が足りない。