2020年5月2日 スピノサウルスは何処へ行く!?

4月29日のネイチャー誌電子版に、スピノサウルスに関する新しい発見が報告された。これまで、スピノサウルスは完全な骨が発見されていなかったが、今回、モロッコで尾の骨まで発掘され、尾の形が復元された。オールのような形をしていて、この骨格の構造から、スピノサウルスは尾をくねらせて泳いでいたことが判明した。

ボクはしばしば、恐竜と妖怪を比較する。恐竜は実在で、妖怪は非実在だ。実在するものには真実の姿がある。ただ、データが不足しているから、よく分からない。考古学的な資料が残っていれば、必ず真実に辿り着く。でも、非実在の妖怪みたいなものは、人の想像力が生み出した産物なので、人によって、時代によって、姿も形も異なる。真実の姿なんてものはない。ツク之助さんが描いているように、スピノサウルスの姿は時代によってかなり変遷している。最初は、ゴジラみたいな二足歩行の恐竜だった。それが、骨盤が鳥に似て前傾姿勢であることが判明して姿が変化し、魚を食べていたことから半水棲であることが疑われて姿が変化し、今回、尾が復元されて、完全に水中を泳ぐ姿に変化した。勿論、これで終わりではなく、新たな発見によって、さらに姿が変わることもある。でも、こういう変化は、真の姿があって、それに近づいていく。妖怪の場合はそうではない。人によって、時代によって、場所によって、さまざまに変化していっても、それは全てが真実なのである。妖怪は、そういう特徴を持っている。そういうのを追いかけながら、人間の想像力を追体験するのが、妖怪の魅力なのである。だから、真の姿なんてものを妖怪に求めてはいけない。