2025年7月13日 謎めいた「わいら」を描いてみた。

  

日本の妖怪の「わいら」を描いてみた。基本的には、全体的な雰囲気は佐脇嵩之の『百怪図巻』のわいらをベースにして、耳や舌など、細部のパーツは鳥山石燕の『画図百鬼夜行』のわいらの要素を加えて描いてみた感じ。

わいらのイラスト

わいらは妖怪画の題材として、多くの狩野派の画家たちが好んで描いている。ただし、絵の横に名前だけしか記されていないので、具体的にどのような妖怪なのかは分からない。絵の中だけにしか登場せず、それ以上の情報がないところが、とても謎めいた感じで、魅力的である。

しかし、昭和の作家たちは、それだけでは満足しなかったので、たくさんの情報を付加していく。やれ、ガマガエルが化けたものだとか、雄と雌で色が違うとか、モグラを食べるとか……。遂には、翼まで生やし、腹が減ると骨ごと人間を食べる5メートル級の怪物になってしまった。いまや伝説となっている佐藤有文氏の『日本妖怪図鑑』(ジャガーバックス)なんかは、まさにそんな解説をしている。石原豪人氏のイラストは、巨大なクマのような怪物わいらを描いていて、ショッキングである。

わいらの変遷

妖怪というのは非実在の存在なので、語り手によっていろんな情報が付加されると、こうやって、どんどんと変質していく。変質していったものも含めて、ボクなんかは妖怪だよなあ、と思う。だから、江戸時代の妖怪画のわいらも、5メートル級の怪物わいらも、ボクはどちらもわいらなのだと思っている。でも、Wikipediaの「わいら」の項目では、佐藤有文が想像したようなわいら像はあまり触れられない。それも変だよなあ、とボクなんかは思う。だって、昭和を生きたボクたちにとって、わいらと言えば、佐藤有文のわいらの印象が強いもんなあ。それだって、江戸時代のわいらではないけれど、わいらはわいらだよなあ。