スレイプニル

[北欧神話]

名称Sleipnir(スレイプニル)【古ノルド語】
容姿8本脚の駿馬。
特徴オージン神の愛馬。
出典『グリームニルの歌(Grímnismál)』、『ギュルヴィたぶらかし(Gylfaginning)』、『詩語法(Skáldskaparmál)』ほか

オージンを乗せて空を駆ける8本脚の駿馬!?

スレイプニルは北欧神話に登場する8本脚の駿馬。オージン神の愛馬で『グリームニルの歌』の中で「馬の中で最高のもの」と評されている。非常に駿足で、空を翔けることもできた。

スレイプニルは雌馬に化けたロキ神が雄馬スヴァジルファリと交わって産んだという不思議な出生を持つ。ことの発端はある巨人族の一人が人間の石工に変装して神々の前に姿を現したところから始まる。石工は神々に対して、巨人族に対抗できる高く頑丈な城壁を作る代わりに月と太陽を貰い受け、そしてフレイヤ女神と結婚したいと要求してきた。無茶苦茶な要求ではあるが、巨人族に対向する城壁は魅力的だ。そこで、神々は、石工が誰の助けも借りずに半年の期限で壁を完成させたら報酬を支払うが、期限内に壁を完成させられなければ報酬は無効とするという条件を石工に突きつけた。すると石工は自分の所有する馬のスヴァジルファリ(Svaðilfari)だけは使わせて欲しいと申し出て、「馬一匹くらいいいじゃないか」というロキの提案により、神々はこの申し出を受け入れた。

ところがスヴァジルファリは次々に巨大な石を運び、石工以上に働くではないか。神々は驚いたが、工事は着々と進んでいく。そして、半年が近づく頃には壁が完成しそうになっていた。慌てた神々は馬の使用を勧めたロキに責任を取るように命じた。そこでロキは雌馬に化けるとスヴァジルファリを誘惑した。スヴァジルファリは雌馬に夢中になって作業を放り出した。石工がスヴァジルファリを追いかけたが捕まらない。結局、城壁が期限内に完成しないことが分かった石工は巨人の姿を現した。そこで、ソール神がミョッルニルで打ち倒してしまったという。こうして神々は頑丈な城壁を手に入れることができたわけである。その後、スヴァジルファリとロキの間に産まれたのが8本脚の駿馬スレイプニルである。スレイプニルはオージンに引き渡され、オージンの愛馬となった。

オージンが巨人フリングニルの馬・グッルファクシ(Gullfaxi)と競走した際には、相手が馬に跨るよりも速く、遥か彼方の丘を越えていたという。スレイプニルは地上にある人間の国や神々の国だけでなく、ときには死者の国まで走って行く。オージンの命を受けたヘルモーズはスレイプニルを駆って冥府ヘルヘイムに赴き、バルドル神を生き返すべく冥府の女王ヘルと交渉しているが、この道中、一度も休息を取らなかったという。ラグナロク(神々の終末)のときにはオージンを乗せて戦場に赴くという。

《参考文献》