両面宿儺(リョウメンスクナ)

[日本伝承]

名称両面宿儺(リョウメンスクナ)【日本語】
容姿前後を向いた2つの顔、4本の手、4本の足を持つ巨人。項、踵、膕がない。
特徴飛騨国で民人から略奪を繰り返し、天皇に刃向かう逆賊。一方、飛騨国の毒龍や悪鬼を退治した英雄でもあり、さまざまな寺社の開基となっている。
出典『日本書紀』ほか

天皇に刃向かう異形の怪物!?

両面宿儺(リョウメンスクナ)は飛騨(現在の岐阜県北部)に伝わる異形の怪物。前後を向いた2つの顔、4本の手、4本の足がある巨人。項(うなじ)や踵(かかと)、膕(ひかがみ、膝の裏)がなかったという。『日本書紀』によれば、仁徳天皇の時代、飛騨国に現れ、天皇に刃向かい、民人から略奪を繰り返す逆賊として武振熊命(たけふるくまのみこと)に討伐されたという。

毒龍や悪鬼を退治し、さまざまな寺社を開いた英雄!?

その一方で、飛騨や美濃(現在の岐阜県南部)に残された伝承の中には、異形の姿とは裏腹に、英雄として活躍する両面宿儺の姿がある。高山市では両面宿儺を観音の化身とする伝承があり、千光寺の創始者とされている。その他にも善久寺の建立も両面宿儺が携わったと伝えられていて、本尊である釈迦如来のほかに両面宿儺の木像が安置されている。また、両面宿儺が天皇の命令によって位山(くらいやま)に巣食う七儺(しちな)という鬼を退治したとも伝えられており、この鬼の頭髪は水無神社に「七儺の頭髪」として奉納されたと伝えられている。また、大日山日龍峰寺の伝承では、両面四臂の異人高沢山に巣食う毒龍を退治したという伝承があり、日龍峰寺の開基は「両面四手上人」であると伝えている。

彼は飛騨地方の豪族の頭領か!?

両面宿儺は、その姿と同様に、略奪を繰り返す乱暴な怪物の顔と、毒龍や悪鬼を退治する英雄の顔を持つ。『日本書紀』の記述は、5世紀頃、大和朝廷が飛騨地方に勢力を拡大し、山岳に住む豪族を征服した史実を何らか反映させたものなのかもしれない。この豪族の首領が両面宿儺で、大和朝廷が彼を征服した後も、飛騨の人々は彼を英雄として崇拝してきた名残りなのかもしれない。

『日本書紀』の中の両面宿儺

六十五年 飛騨國有一人 曰宿儺 其為人 壹體有兩面 面各相背 頂合無項 各有手足 其有膝而無膕踵 力多以輕捷 左右佩劒 四手並用弓矢 是以 不随皇命 掠略人民爲樂 於是 遣和珥臣祖難波根子武振熊而誅之

仁徳天皇65年に、飛騨国にある人がいた。その名は宿儺という。ひとつの胴体に2つの顔があり、それぞれ反対側を向いていた。頭頂はくっついていて項(うなじ)はなく、それぞれに手足があり、膝はあるが膕(ひかがみ)と踵(かかと)はなかった。力強く軽捷で、左右に剣を持ち、四つの手で弓矢を用いた。天皇の命令には従わず、民人から略奪することを楽しんでいた。それため、和珥(わに)氏の祖である難波根子武振熊(なにわねこ たけふるくま)を遣わして彼を攻め滅ぼした。

(『日本書紀』より)

《参考文献》