パールヴァティー

[ヴェーダ・ヒンドゥー神話]

名称पार्वतीPārvatī〕(パールヴァティー)《山の娘》【サンスクリット】
उमाUmā〕(ウマー)【サンスクリット】 गौरीGaurī〕(ガウリー)【サンスクリット】
容姿黄金の肌をした女神。
特徴ヒマラヤ山脈の娘。シヴァ神の后で、シヴァ神との間にガネーシャ神、スカンダ神をもうける。

シヴァ神のお后さまはヒマラヤ育ち!?

パールヴァティーはヒンドゥー教の女神で、シヴァ神のお后さま。シヴァ神との間にガネーシャ神スカンダ神を生んでいる。ヒマラヤ山脈の山神ヒマヴァットの娘で、ガンジス川の女神ガンガーは彼女の妹に当たる。パールヴァティーは《山の娘》という意味で、ヒマラヤ山脈のひとつである標高3,500メートルの聖なる山ナンダ・デーヴィーに住んでいるという。パールヴァティーはドゥルガーカーリーなどの女神と同一視され、彼女たちはしばしばパールヴァティーの化身とされる。特にカーリーはパールヴァティーの憤怒相とされる。タントラの中では、パールヴァティーはシヴァ神の性力(シャクティ)の源と考えられていて、シヴァ神とともに、アルダナーリーシュヴァラという両性具有の存在になることもある。

女神サティーは転生してシヴァ神の心を癒す!?

実は、シヴァ神には、サティーという最初の妻がいた。パールヴァティーは、このサティーが転生した女神とされる。サティーは聖仙ダクシャの娘だったが、ダクシャは創造神ブラフマーの息子で、ブラフマーを崇拝していたため、シヴァ神とは折り合いが悪かった。しかし、サティーとシヴァは深く愛し合い、結婚を望んだ。ダクシャはなかなかそれを認めず、サティーの婿選びの儀式にもシヴァを呼ばなかった。困ったサティーはシヴァの出現を祈り、突然、シヴァが儀式の場に現れて、サティーとシヴァは結ばれた。

その後もダクシャとシヴァは仲が悪く、さまざまな神々が呼ばれる重要な儀式の場にもシヴァは呼ばれなかった。この扱いに我慢できなかったサティーは、自ら炎に飛び込んで焼身自殺してしまった。妻の死の知らせを聞いて激怒したシヴァ神はダクシャの首を刎ね、ダクシャの祭祀を徹底的に破壊した。

さらに、シヴァ神は焼け焦げたサティーの死体を抱いて世界中を放浪したという。腐敗した死体からは災いが撒き散らされ、世界は闇に閉ざされたが、それでもシヴァは狂気にとり憑かれたままだった。そこでヴィシュヌ神はサティーの死体を細かく切り刻み、バラバラにした。こうしてようやくシヴァ神は正気に戻り、自分の行いを反省して長い苦行の道に入ったという。

サティーの死体がばら撒かれたところは聖地になって、さまざまな女神が誕生したとされている。ヒマラヤ山脈の娘パールヴァティーも、こうして生まれ変わったサティーの一人である。

ところで、ちょうどその頃、アスラ族ターラカがブラフマーに苦行の成果を認められ、「シヴァの息子以外には殺されない身体」を手に入れた。そして、あっという間に三界(地上界、空中界、天界)を支配し、アスラの王になると、人々や神々を苦しめるようになった。しかし、サティーを失い、苦行を続けるシヴァは息子をつくる気配がない。困った神々はパールヴァティーを仕向けるが、シヴァは魅力的なパールヴァティーにも心を許さず、瞑想を続けた。試みに失敗したパールヴァティーは、シヴァ神に負けないような厳しい修行に入った。その真剣さが伝わり、遂に二人は結ばれた。

こうして、シヴァとパールヴァティーから軍神スカンダが生まれ、ターラカは退治されたのである。

強く抱き締めすぎて、息子たちはくっついちゃった!?

さて、さきほどの軍神スカンダは日本では韋駄天(いだてん)として知られる。彼は六面十二臂(6つの頭と12本の腕を持つ)の神さまだが、彼がこのような姿になったのは、パールヴァティーの所為だという。本来、軍神スカンダは火の神アグニと供物の女神スヴァーハーの息子として誕生しているが、その実、シヴァがアグニに乗り移り、パールヴァティーがスヴァーハーに乗り移って代理出産させた神であった。こうして生まれたスカンダは、本当は6人兄弟として生まれた。しかし、パールヴァティーは彼らのことを大変かわいがり、あまりに強く抱き締めたため、身体がくっついてひとつになってしまったという。

シヴァ神の第三の目の秘密!?

シヴァ神の額には第三の目があるが、これもパールヴァティーに関係している。シヴァ神は苦行が大好きで、いつも瞑想ばかりしている。自分のことを相手にしてもらえず、退屈したパールヴァティーは、あるとき、ふざけて両手でシヴァの両目を塞いで目隠しをした。その途端、世界は闇に包まれ、生き物たちは皆、恐れ慄いた。そのとき、シヴァは額に第三の目を出現させた。そして、第三の目から光線を放ち、ヒマラヤ山脈を燃やした。こうして、世界は光を取り戻したという。

金色の肌の女神!?

パールヴァティーは金色の肌を持つことで有名だが、元々は黒い肌だった。これをシヴァに非難されたため、彼女は森の奥に引きこもって苦行を始めた。それを哀れんだブラフマーが、彼女を金色の肌の女神(ガウリー)に変えたという。

穏やかな女神、血と殺戮を好む戦闘の女神に化身!?

ヒンドゥー神話には、アスラ族と戦うために生み出された戦闘の女神ドゥルガーがいる。18本の腕にそれぞれ神々から与えられた武器を持ち、アスラ族の軍勢を殲滅していく。このドゥルガー女神も、パールヴァティーが化身した姿とされている。また、ドゥルガー女神がシュムバ、ニシュムバという兄弟のアスラ族の軍勢と戦ったときには、怒りから血と殺戮を好むカーリー女神が出現し、敵を殲滅した。このカーリー女神は牙を生やし、舌をだらりと垂らした恐ろしい女神だが、この女神もパールヴァティーの憤怒相であるとされる。カーリーはラクタヴィージャを倒したときには流れる血を全て飲み干し、勝利に酔って踊り始めたが、あまりに激しく、大地が粉々に砕けそうだった。そこで夫のシヴァ神が彼女の下に横になり、その腹で衝撃を緩和しなければならなかった。

このように、インドでは、さまざまな女神がシヴァ神の妻として、パールヴァティー女神と同一視されている。シヴァ信仰が現在、これだけ盛んになったのは、各地の土着の女神たちを全てサティーの転生として捉え、自らの妻として取り込み、パールヴァティー女神と同一視したためである。