ネック

分 類ヨーロッパ伝承 
名 称 Neck(ネック)【英語】
別 称 Näck(ネック)、Nek(ネク)【スウェーデン語】
Neker(ネッケル)【古スウェーデン語】
Nykr(ニュクル)【古アイスランド語】
Nykk(ニュック)【ノルウェー語】
Näkki(ネッキ)【フィンランド語】
Nøk(ヌック)、Nøkke(ヌッケ)【デンマーク語】
Nikke(ニッケ)【古デンマーク語】
Nicker(ニッカー)【オランダ語】
Nix(ニクス)【ドイツ語】
容 姿変幻自在だが、一般的には男性の姿。緑の目、緑の歯、緑の帽子、金髪。
特 徴男性の水の精。髪や服が濡れている。ヴァイオリンを得意とし、人々を魅了する。しばしば音楽に魅了された人間は水中に引き込まれる。

水の精霊、音楽で人を魅了して水中に引き込む!?

ネックはスカンディナヴィア半島などに伝わる水の精霊である。英語圏ではネックと記述されるが、スウェーデン語ではNネックやネク、古スウェーデン語ではネッケル、古アイスランド語ではニュクル、ノルウェー語ではニュック、フィンランド語ではネッキ、デンマーク語などではヌックやヌッケ、古デンマーク語ではニッケ、オランダ語ではニッカー、ドイツ語ではニクスなど、地域によって呼び名はさまざまである。いずれにしても、スカンディナヴィア半島を中心にゲルマン民族の間に広く浸透していた水の精霊である。

これらの水の精霊はみんな男性で、女性版はニクシーと呼ばれる。女性は下半身が魚で、人魚のような姿として描かれることが多いが、男性の場合は通常、人間のような姿で描かれる。ただし、彼らは変幻自在で、どんな姿にでも変身することができる。丸太のような姿で水に浮かんでいることもあれば、蛇のような姿の場合もある。馬の姿で人々を水中に引き込むこともある。けれど、一般的には緑の帽子を被り、緑の目をした男性の姿で出没する。

ネックは音楽の才能に長けているようである。伝承では、しばしば、毛むくじゃらの水の精が水辺の岩に座ってヴァイオリンを弾く姿を目撃されている。ハープの場合もある。大抵、その音色は素晴らしく、人々はそれに魅了される。その音色には魔力があり、伝承によってはネックの魅惑的な演奏や歌は人々を水辺に誘い込み、溺死させるという。ネックは人間と変わらない姿をしているが、髪の毛や服などがどこかしら濡れているので、それで判別できるという。

また、ネックと人間の女性の恋愛譚も伝わっているが、大抵の場合、伝承では、最終的にネックが水の中へ戻ってしまう。ネックは水源から離れては暮らせない種族なのである。

ちなみに音楽と水の精霊と言えば、ギリシア・ローマ神話に登場するセイレーン(Σειρήνも、その歌声で航海士たちを魅了し、船を座礁させて殺してしまう。また、スウェーデンのベッカヘスト(Bäckahast)は馬の姿をした水の精霊で、音楽で人を水中に引き込む恐ろしい存在だが、うまく尾から毛を引き抜いて、その毛をヴァイオリンの弓にすると素晴らしい音楽家になれると信じられていた。

《参考文献》

Last update: 2012/07/22

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