レンオアム/リントヴルム

分 類ヨーロッパ伝承(スカンディナヴィア伝承)
名 称 Lindorm(レンオアム)《しなやかなヘビ》【デンマーク語】
Lindwurm(リントヴルム)【ドイツ語】
容 姿巨大な蛇の怪物。元々は手足や翼がない竜だが、時代が下って飛竜のような姿で描かれることもある。
特 徴スカンディナヴィア地方の竜。手足や翼はなく、空は飛ばない。海や川などに棲み人々を襲う。民話などでは呪いがかかった王子であることも。
出 典

大蛇型の竜!?

レンオアム、あるいはリントヴルムはスカンディナヴィア地方に古くから伝わる竜。lind(リン)は《しなやかな》、orm(オアム)は《ヘビ》を意味し、地を這う大蛇の怪物である。元々、古い時代の北欧の竜は翼を持たず、空も飛ばない「ワーム型」の竜であり、レンオアムもヘビのような姿をしている。空飛ぶ竜である「ドラーウェ(drage)」の概念は後から入って来た外来の概念で、次第に同一視されるようになった。

ノルウェーのレンオアムはシー・サーペントのように海に出現する巨大な蛇の怪物として知られ、中世の船乗りたちの間ではさまざまな目撃談が伝わっていた。また、オーストリアのクラーゲンフルト市の伝承ではリントヴルムは河の主として旅行者を襲っていたが、人々は牛を餌にこの怪物を釣り上げて退治したというので、完全にワーム伝承の典型である。

リントヴルム王子、呪いによって竜になった!?

スカンディナヴィア地方には「リントヴルム王子」という民話が伝わっている。この民話では、リントヴルムは魔女の言いつけを守らなかった王女から生まれた蛇の怪物であった。リントヴルムは国王に花嫁を探してくるように要求し、次々と若い女性が花嫁としてリントヴルムの棲む館に連れてこられた。しかし、女性たちはリントヴルムを愛さなかったため、次々とリントヴルムに食べられてしまった。あるとき、羊飼いの娘に白羽の矢が立った。しかし、彼女は魔女の助言を得てリントヴルムの呪いを解いた。リントヴルムはたちまち美しい王子の姿になり、めでたく二人は結ばれたという。ヨーロッパ伝承では、このように、しばしば呪いなどで人間が竜になることがある。

元々は地を這う(あるいは水辺に棲息している)リントヴルムであるが、時代が下るに連れて、やがて稲光や流星などと関連付けられ、空飛ぶ竜へと変化していった。近年はワイヴァーンと同じように、翼を生やして空を飛ぶ竜の姿で描かれることも多く、また、ヘビ型の竜に前足がついたものを指してリントヴルムと呼ぶ場合も多い。

《参考文献》

Last update: 2021/05/29

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