ヘイムダッル

[北欧神話]

名称Heimdallr(ヘイムダッル)【古ノルド語】
容姿アース族でもっとも美しい。黄金の歯を持つ。
特徴アースガルズ(神々の国)の見張り番。ほとんど眠らず、100マイル先を見通せ、草の伸びる音も聴き取れる聴覚を持つ。ラグナロクではロキ神と戦って相討ちになる。
出典『スリュムの歌(Þrymskviða)』『リーグの歌(Rígsþula)』『巫女の予言(Vǫluspá)』『ギュルヴィのたぶらかし(Gylfaginning)』『詩語法(Skáldskaparmál)』ほか

巨人の侵攻を見張る神々の番人!?

ヘイムダッルは北欧神話に登場する神さまである。彼はアースガルズ(神々の国)の番人である。アースガルズとミズガルズ(人間たちの国)を繋ぐ虹の橋ビフレストの近くにヒミンビョルグ(Himinbjǫrg)という住居を構えていて、そこで侵入者がいないか見張りをしている。ヘイムダッルはほとんど眠らず(『ギュルヴィのたぶらかし』では「鳥よりも睡眠を必要としない」と書かれている)、昼でも夜でも100マイル先を見ることができる。また、草が生長する音や羊の毛が伸びる音まで聴き取れるほどの鋭い聴覚を備えているというから、まさに見張り番としてはうってつけである。『スリュムの歌』でも、ヘイムダッルはアース族の中でもっとも美しく、ヴァン族のように未来を見通せるという記述がある。

ヘイムダッルは角笛ギャッラルホルン(Gjallarhorn)を持っていて、ラグナロク(終末の日)に、巨人の軍勢がビフレストを渡ってアースガルズへ攻めてくると、この角笛を吹き鳴らし、神々を目覚めさせる。ギャッラルホルンの音はラグナロクの到来を告げる合図で、世界の隅々に響き渡るのである。

貴族、平民、奴隷――身分制度はヘイムダッルがつくった!?

『リーグの歌』には、ヘイムダッルが「リーグ」と名乗って人間たちの国を旅し、身分制度をつくったことが記されている。この歌の中で、ヘイムダッルは3人の夫婦を訪ね、Þræll(スレール)《奴隷》、Karl(カルル)《自由農民》、Jarl(ヤルル)《貴族》という3つの子孫をつくっている。彼らの子孫が、それぞれ貴族、平民、奴隷になるのである。『巫女の予言』では人間のことを「ヘイムダッルの子ら」と呼びかけているが、ヘイムダッルが身分制度をつくったことに由来するのだろう。

ヘイムダッルとロキの相性は最悪!?

ヘイムダッルとロキは相性がよくなかったらしい。『詩語法』ではヘイムダッルを表すケニング(詩で用いるお洒落な言い換え)として、「ロキの敵」という表現が挙げられているほどだ。あるとき、ロキが蠅に変身し、フレイヤ女神の寝所に忍び込み、彼女の首飾りであるブリーシンガメンを盗もうとした。しかし、100マイルを見通せるヘイムダッルの目は誤魔化せない。ヘイムダッルは首飾りを取り戻すべくロキを追跡し、両者、さまざまなものに変身して激しく戦った。最終的には、両者、アザラシに変身して海で戦い、ヘイムダッルが勝利し、首飾りは無事にフレイヤ女神の元に戻ったという。ヘイムダッルが「フレイヤの首輪の探し手」というケニングを持つのは、このことに由来する。このときの因果か、ラグナロクでは、ヘイムダッルはロキと対峙することとなり、相討ちになる運命である。

ヘイムダッルの母親が9人姉妹ってどういうこと!?

ヘイムダッルの出生は不思議だ。彼は9人姉妹の息子とされている。要するに9人の母親がいるということだ。9人姉妹と言えば、ラーンの娘たちを連想させる。ヘイムダッルは波の乙女たちから生まれたということなのかもしれない。

『ギュルヴィたぶらかし』によれば、ヘイムダッルは「白いアース」と呼ばれていて、歯は黄金で出来ているらしい。また、グッルトップ(Gulltoppr)という素晴らしい馬を持っているという。