ハウレス

分 類魔法書文献
名 称 Haures,Havres(ハウレス)【ラテン語】
Hauras(ハウラス)、Flauros(フラウロス)【ラテン語】
容 姿大きく逞しい豹の姿、あるいは人間。目の縁は燃え盛り、恐ろしい形相。
特 徴過去、現在、未来のことを教えてくれる。また、天地創造、神、悪霊の堕天について語る。三角魔法陣の中に入れて命令しないと術者を欺く。
出 典ヴァイヤー『悪魔の偽王国』(1577年)、『レメゲトン』「ゴエティア」(17世紀頃)ほか

敵を焼き尽くし、悪霊の誘惑から守ってくれる恐ろしい悪霊!?

ハウレスはソロモン王が使役したとされる72匹の悪霊の1匹で、魔法書『レメゲトン』「ゴエティア」の64番目に名前を挙げられている。ハウラス、あるいはフラウロスとも呼ばれる。この魔法書はソロモン王が記したものとされ、さまざまな地獄の悪霊たちを呼び出す方法が書かれている。それによれば、ハウレスは地獄では公爵の位にいて、36個の悪霊の軍団を率いている。

ハウレスを召喚すると、逞しい巨大なヒョウの姿で出現。呼び出した術者が命じると人間の姿になるが、燃えるような目で、恐ろしい形相をしているという。

過去、現在、未来について真実を教えてくれる悪霊というのは、『ゴエティア』には多く登場するので、あまり珍しい特徴ではないが、ハウレスはそれに加えて、天地創造や神のこと、悪霊たちがどのように堕天したのかについて説明してくれる。また、他の悪霊たちなどが術者を誘惑しようとしてきたら、それを防いでくれ、術者が望めば、気に入らない人間を焼き尽くしてくれるという恐ろしい能力も備えている。

ただし、彼に何か命令するときには、彼の身体が三角魔法陣の中に入っているかどうか確認しなければならない。一歩、彼が三角魔法陣から足を踏み出した場合、彼の言葉は嘘だらけになる。巧みに術者を欺き、騙そうとするから要注意だ。

『悪魔の偽王国』で描かれるフラウロス

魔術師アグリッパの弟子として知られるヨーハン・ヴァイヤーが著した『悪魔の偽王国(プセウドモナルキア・ダエモヌム)』では69匹の悪霊たちが紹介されている。ここでは「フラウロス」として62番目に紹介されている。

Flauros dux fortis: conspicitur forma leopardi & terribili. In humana specie vultum ostentat horrendum, & oculos flammeos. De præteritis, præsentibus & futuris plene & vere respondet. Si fuerit in triangulo, mentitut in cunctis, & fallit in aliis negotiis. Libenter loquitur de divinitate, mundi creatione & lapsu. Divina virtute cogitur, & omnes alii dæmones sive spiritus, ut omnes adversarios exorcistæ succendant & destruant. Et si virtute numinis ipsi imperatum fuerit, exorcistæ tentationem non permittit. Legiones viginti sub sua habet potestate.

フラウロスは強力な公爵で、際立って恐ろしいヒョウの姿で出現する。人間の姿では厳しい顔と燃える目を持つ。彼は過去、現在、そして未来について完全に真実を答える。もしも彼が三角魔法陣の中にいた場合、全てについて嘘をつき、欺こうとする。彼は神や天地創造、堕天について喜んで話す。彼は神の力で強いれば、あらゆる悪魔や悪霊と同様、敵対する術者を燃やし、破壊する。命じれば、術者が誘惑されないようにする。彼は配下に20個の軍隊を従えている。

(ヨーハン・ヴァイヤー『悪魔の偽王国』より)

「ゴエティア」では36個の悪霊の軍団を率いていると説明されているが、『悪魔の偽王国』では20個の軍隊を率いているとされ、若干、違いがある。また、一般に膾炙しているものとは逆で、三角魔法陣の中にいた場合に嘘を吐くと説明されていて、魔法陣から引っ張り出す必要がある点も「ゴエティア」の記述とは真逆である。「ゴエティア」よりも『悪魔の偽王国』の方が成立時期は古いので、こちらの方が本来の記述なのかもしれない。

『レメゲトン』「ゴエティア」に描かれるハウレス

17世紀頃には成立していたと考えられている中世の魔法書『レメゲトン』の第1部「ゴエティア」にハウレスの記述がある。「ゴエティア」はソロモン王が使役したという72匹の悪霊について、その召喚の手順を具体的に記したもので、必要な呪文や魔法陣、72匹の悪霊たちのそれぞれの能力や紋章(シジル)、召喚に際しての注意事項などが書かれている。「ゴエティア」ではハウレスは64番目に紹介されている。

HAURES, or HAURAS, or HAVRES, or FLAUROB. The Sixty-fourth Spirit is Haures, or Hauras, or Havres, or Flauros. He is a Great Duke, and appeareth at first like a Leopard, Mighty, Terrible, and Strong, but after a while, at the Command of the Exorcist, he putteth on Human. Shape with Eyes Flaming and Fiery, and a most Terrible Countenance. He giveth True Answers of all things, Present, Past, and to Come. But if he be not commanded into a Triangle, Δ, he will Lie in all these Things, and deceive and beguile the Exorcist in these things, or in such and such business. He will, lastly, talk of the Creation of the World, and of Divinity, and of how he and other Spirits fell. He destroyeth and burneth up those who be the Enemies of the Exorcist should he so desire it; also he will not suffer him to be tempted by any other Spirit or otherwise. He governeth 36 Legions of Spirits, and his Seal is this, to be worn as a Lamen, etc.

ハウレスの紋章

ハウレス、ハウラス、あるいはフラウロス:第64番目の悪霊はハウレス、ハウラス、あるいはフラウロスである。彼は偉大な公爵で、最初は大きく恐ろしく逞しい豹の姿で出現するが、しばらくして術者の命に応じて人間の姿をとる。激しく燃える目を持ち、非常に恐ろしい形相をしている。彼は過去、現在、未来のあらゆる事柄について真の答えを与える。しかし、三角魔法陣(△)の中で命令されなかった場合、彼はあらゆる物事において嘘をつくし、術者を欺き、騙そうとする。彼は最後には天地創造のことや神のこと、そして彼やその他の悪霊たちがどのように堕天したのかについて語るだろう。彼は術者がそう望めば、術者の敵たちを破壊し、燃やし尽くす。また、彼はあらゆる他の悪霊やその他のものに術者が誘惑されないようにする。彼は36個の悪霊の軍団を統治する。これが彼の紋章で胸飾りとして身につけなければならない。

(メイザース&クロウリー『ゴエティア』より)

コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』のフロウラス

フランスの文筆家コラン・ド・プランシーが1818年にまとめた『地獄の辞典』は改訂を重ね、1863年の第6版ではブレトンの悪魔の挿絵が加わった。『地獄の辞典』では、ブレトンの挿絵とともに「フラウロス」として紹介されている。

Flauros, grand général aux enfers. Il se fait voir sous la figure d'un terrible léopard. Lorsqu'il prend la forme humaine, il porte un visage affreux, avec des yeux enflammés. Il connaît le passé, le présent et l'avenir, soulève tous les démons ou esprits contre ses ennemis les exorcistes, et commande vingt légions.

ブルトンの描くフラウロス

フラウロスは地獄の偉大な将軍である。彼は恐ろしいヒョウとして姿を現す。人間の姿をとるときには、燃える目をした恐ろしい顔をしている。彼は過去、現在、未来について知っていて、敵対する術者に対して、あらゆる悪霊たちを工面する。また、彼は20個の軍隊を率いている。

(コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』より)

《参考文献》

Last update: 2021/02/23

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