ガネーシャ

[ヴェーダ・ヒンドゥー神話]

名称गणेशGaṇeśa〕(ガネーシャ)《群衆の主》【サンスクリット】
गणपतिGaṇapati〕(ガナパティ)《群衆の主》【サンスクリット】
एकदन्त〔Ekadanta〕(エーカダンタ)《1本牙》【サンスクリット】
मोदकप्रिय〔Modakapriya〕(モダカプリヤ)《モダカを好む者》【サンスクリット】
容姿ゾウの頭を持った太鼓腹の男性神。四本腕で、片方の牙は折れている。トガリネズミを騎乗獣にしている。
特徴シヴァ神とパールヴァティー女神の息子。商売繁盛、学問、開運の神。生まれてすぐにシヴァ神に頭を刎ねられ、ゾウの頭をつけられた。『マハーバーラタ』の口述書記をした。

ガネーシャはヒンドゥー神話に登場するゾウの頭を持った神さま。でっぷりとした太鼓腹で、4本の腕を持つ。2本ある牙のうち、片方は折れている。トガリネズミのムーサカ騎乗獣(ヴァーハナ)にしている。商売繁盛の神、学問の神、開運の神など、現世利益を司る神さまとして現在のインド、特にマハーラーシュトラ州を中心にしたデカン高原で大人気である。ヒンドゥー教の寺院では、最初にガネーシャにお参りすることになっている。

生まれてすぐに頭を刎ねられ、ゾウの頭に挿げ替えられた!?

元々、ガネーシャはゾウの頭ではなく、美男子として生まれた。あるとき、シヴァ神の妻であるパールヴァティー女神(ウマー女神)は、自分の言いなりになる息子が欲しくなり、自分の垢を集めて人形を造り、それに命を吹き込んだ。これがガネーシャで、非常に美しい青年だったため、パールヴァティーは大満足した。早速、パールヴァティーは「私の入浴中、誰も入れてはならない」とガネーシャに命じると、入浴を開始した。

ところが、そこに夫であるシヴァ神が帰ってきた。ガネーシャはシヴァ神を知らなかったため、見知らぬ男を通すまいとシヴァ神の前に立ちはだかった。シヴァは家来に命じて退かそうとしたが、ガネーシャがあまりに強力だったため、家来では太刀打ちできない。そこでシヴァ自らがガネーシャの首を斬り落とした。

入浴を済ませたパールヴァティーは息子の惨状に嘆き悲しんだ。シヴァは慌てて飛んでいった首を探したが見つからず、代わりに、近くを通りかかったゾウの頭をくっつけて、息子を復活させた。このため、ガネーシャはゾウの頭を持つ奇妙な姿の神さまになったのである。

ネズミを乗り物にしている!?

インドの神々は動物を乗り物にしていることが多いが、ガネーシャの騎乗獣(ヴァーハナ)はネズミ(厳密にはトガリネズミ)で、ムーサカと呼ばれている。もともと、このネズミは悪鬼で、ガネーシャに調伏されてネズミに姿を変えられたとされる。巨大なゾウの頭を持ったガネーシャが小さなネズミを御している、ということから、ガネーシャはどんなことでもできる、と解釈されている。また、ネズミは暗闇を象徴していて、ガネーシャが暗闇を調伏した、と解釈することもあるらしい。その他にも、ネズミは欲望の象徴で、ガネーシャは欲望を制御しているという考え方もあるようだ。

1本牙のガネーシャ!?

南インドには「モダカ」という伝統菓子がある。餡(あん)を小麦粉などで包んで揚げたものであるが、ガネーシャはこのモダカが大好物である。何しろ、《モダカを好むもの》という意味の「モダカプリヤ」という別名まであるくらいだ。

ある誕生日、ガネーシャはモダカをたらふく食べて、腹をパンパンに膨らませて、ムーサカに乗って家に帰った。その途中、突然、蛇が道を横切り、驚いたムーサカはガネーシャを振り落としてしまう。その衝撃で、ガネーシャの腹は破れ、腹の中から大量のモダカが飛び出した。ガネーシャは慌ててモダカを拾って腹に詰め込むと、モダカがこぼれないように、蛇を掴み、腹をぐるぐる巻きにした。それを見ていた月が笑ったので、ガネーシャは腹を立て、自分の牙をへし折ると、月に投げつけた。こうして月は満ち欠けをするようになったという。この出来事のために、ガネーシャの牙は1本、折れてしまったというのである。

ちなみに、ガネーシャの牙が1本であることを説明する話として、別のヴァージョンも伝わっていて(こういう別伝が多いのがインドの神話の特徴である!)、あるとき、シヴァが眠っているときにパラシュラーマという神さまがやってきた。ガネーシャは父親の眠りが妨げられることを嫌い、パラシュラーマを室内に入れることを拒んだ。そして両者の間に争いが起きた。パラシュラーマはガネーシャに斧を投げつけたが、ガネーシャは、この斧がシヴァから与えられたものであることを知っていたため、父親に対する敬意から敢えてその武器を避けずに、牙で受け止めた。このため、牙が折れてしまったという。この出来事から、ガネーシャは《1本牙》という意味のエーカダンタという別名で呼ばれる。

最初にガネーシャをお参りすべし!?

シヴァ神とパールヴァティー女神は、あるとき、2人の息子であるガネーシャとスカンダに、先に世界を3回回った方が勝利という競争をさせた。ところが、スカンダが孔雀のパラヴァーニに乗って世界を回って戻ってくると、ガネーシャはすでに両親の横に座っている。ガネーシャは「自分にとって両親は世界に等しい」と説明して、両親の周りを3周したのであった。シヴァ神はこれに喜び、重要な仕事を行うときには、真っ先にガネーシャに礼拝するように命じたという。このため、ヒンドゥー教の寺院では、入り口の一番近くにガネーシャの神像が安置されているのである。

『マハーバーラタ』を口述筆記!?

叙事詩『マハーバーラタ』は聖者ヴィヤーサの作とされるが、ヴィヤーサは内容を朗誦し、それを文字に書き起こしたのはガネーシャであると信じられている。ヴィヤーサは自分が語る叙事詩を書き留めるようにガネーシャに依頼したが、ガネーシャは物語が完成するまでヴィヤーサが語り続ける、という条件で合意した。すなわち、途中でヴィヤーサが眠ったり、語るのを止めてしまったりしたら、ガネーシャは姿を消してしまう、というのである。ガネーシャの筆記の速さが尋常でないことを知っていたヴィヤーサは、わざと複雑な文章を考え、ガネーシャが考え込んで筆を止めたときに次の内容を考えるようにしたという。このとき、ガネーシャは折れた片方の牙をペンとして使用したと信じられている。

仏教でのガネーシャの取り扱い!?

ちなみに密教では、歓喜天(かんぎてん)として取り込まれた。ガネーシャ同様、ゾウ頭の姿で描かれるが、ゾウ頭の男女が対になって抱擁している姿で描かれることもある。仏教を守護し財運と福運をもたらす神さまとして崇拝されている。