フレイ

[北欧神話]

名称Freyr(フレイ)、Yngvi(ユングヴィ)【古ノルド語】
容姿高貴で美しい青年神。
特徴豊穣神。ヴァン族の出身で海神ニョルズの息子。フレイヤとは双子の兄弟。妖精アールヴたちの王。炎の巨人スルトと戦って敗れる。
出典「ロキの口論(Lokasenna)」「グリームニルの歌(Grímnismál)」「スキールニルの歌(Skírnismál)」「巫女の予言(Vǫluspá)」、「ギュルヴィたぶらかし(Gylfaginning)」、「ユングリング家のサガ(Ynglinga saga)」ほか

高貴で美しい北欧の豊穣神!?

フレイは北欧神話に登場する豊穣神。高貴で美しい青年神として描かれる。オージンをリーダにした神々はアース族に属するが、フレイはそれとは異なるヴァン族の出身である。『ユングリング家のサガ』によれば、アース族とヴァン族は長い戦いの末に和解し、お互いに人質の交換がなされたという。アース族からはヘーニルとミーミルが派遣され、ヴァン族からはフレイ、双子の兄弟である女神フレイヤ、そしてフレイの父親である海神ニョルズがやってきたという。オージンはニョルズとフレイを犠牲祭の祭司に任命し、フレイが3代目のスウェーデン王となった。その治世は豊作が続いたという。

豊穣との繋がりからか、子孫繁栄のシンボルとして、フレイの像は巨根の神としてとしてイメージされた。また、多産の象徴として、フレイの聖獣は猪や豚とされ、ユール祭ではフレイに対して豚が捧げられたという。

フレイはたくさんの宝具を持っている!?

フレイはたくさんの宝具を持っている。そのひとつが黄金の猪「グッリンブルスティ(Gullinbursti)」で、この猪は水中や空中をどんな馬よりも早く駆け抜けたという。この黄金の猪は、小人族であるドヴェルグたちが作ったものである。『ギュルヴィたぶらかし』には、フレイがバルドルの葬儀にこの猪に乗って駆けつけたという記述がある。また、伸縮自在で折り畳めば簡単に持ち運びできる帆船「スキーズブラズニル(Skíðblaðnir)」もフレイの持ち物である。これもドヴェルグたちが作ったもので、広げれば神々がみんな乗れるほど巨大な船になるのに、畳んでしまえば、袋にも収まるほど小さくなるという優れもの。しかも、帆を張ればどこからともなく風が吹いてくるという。また、フレイは魔法の「剣」も持っている。愚かな者が持てば鈍(なまく)らだが、正しい者が持てば使い手の手元を離れて勝手に巨人族と戦うという。残念ながら、この「剣」の名称は知られていない。また《血に塗れた蹄》という意味の「ブローズグホーヴィ(Blóðughófi)」という馬もフレイの持ち物とされる。

フレイは妖精の国の王さま!?

フレイは北欧世界の妖精族であるアールヴたちの王さまで、妖精国アールヴヘイムを支配している。アールヴは古代ゲルマン人の間に古来より伝わっていた自然の豊かさを司る精霊で、皆、若々しく美しいとされる。まさに高貴で美しい豊穣神フレイが治めるにはぴったりの種族である。「グリームニルの歌」によれば、この妖精国アールヴヘイムは、フレイの最初の歯が生えたお祝いに贈られたものだとされている。

フレイ、恋に落ちて「剣」を失う!?

フレイの一番有名な神話と言えば、女巨人ゲルズへの恋と「剣」の喪失の物語である。あるとき、フレイはちょっとした出来心からオージンの玉座フリズスキャールヴに座ってしまう。フリズスキャールヴは世界中を見渡すことができる玉座で、オージンとその妻フリッグにしか座ることが許されていなかったが、フレイはオージンの留守中にこっそりと座ってみたわけである。すると、巨人の国ヨートゥンヘイムに棲む絶世の美女ゲルズの姿がフレイの目に止まった。フレイはたちまち恋に落ちてしまう。そこでフレイは彼女に求婚するため、従者のスキールニルを遣いにやることにした。巨人の国の旅は非常に危険なので、スキールニルは「剣」と馬を所望する。フレイは快諾し、「剣」と馬はスキールニルのものになった。ゲルズの家は炎に囲まれていたが、この馬が炎をも超えていける馬だったため、スキールニルは無事にゲルズのもとに辿り着き、フレイの求婚を伝えることができたとされる。その後、「剣」は褒美としてスキールニルに与えられたとも、ゲルズに与えられたともされている。

しかし、フレイはこの一件で「剣」を失ってしまった。「ロキの口論」の中で、、ロキは「ゲルズを黄金で買った上に『剣』をやってしまって、暗い森をムースペッルの子らが攻めてきたらどうやって戦うのか」と詰問している。「剣」を失くしたフレイの元に巨人ベリが攻めてきたときには、フレイは鹿の角で戦うことを余儀なくされる。そのときには何とかベリを倒すことができ、フレイは「ベリの殺し手(bani Belja)」という異名を持つことになる。しかし、神々の終末ラグナロクのときには、フレイは炎の巨人族であるムースペッルのスルトと対峙し、スルトに敗北する運命にある。これにより、神々はムースペッルたちの侵攻を許し、この世界は炎上することになる。フレイがちょっとした出来心でオージンの玉座に座り、女巨人に恋に落ち、「剣」を手放したことが小さな綻びとなって、オージンの治める世界は破滅してしまうのである。

ユングリング家の祖先はフレイだった!?

ちなみに、一般に彼はフレイと呼ばれるが、Freyr(フレイ)とは《主人》を意味する古いゲルマン語で、本名はユングヴィ(Yngvi)というらしい。スウェーデンの最初の王家はフレイの子孫であり、ユングヴィの名前からユングリング家(Yngling)と名乗ったという。