バハムート

分 類イスラーム
名 称 بهموت‎〔Bahamūt〕(バハムート)【アラビア語】
容 姿巨大な魚。
特 徴世界を支える。
出 典『千一夜』(9世紀頃)、ザカリーヤー・アル=カズウィーニー『創造物の驚異』(13世紀)ほか

大地を乗せて泳ぐ巨大な魚!?

バハムートはイスラームの伝承に登場する世界を支える巨大な魚である。ユダヤ・キリスト教伝承に登場する陸の怪物ベヒモス(カバやゾウ、ウシの姿で想像される)が、アラビア伝承に入る中で徐々に変化し、おそらく海の怪物レヴィアタンとの混同から魚の怪物になってしまったもの。

中世アラビアの世界観では、この世界は多層構造になっており、世界の一番底には水がある。その水の上に世界魚であるバハムートが浮かんでいて、その背中に巨大な世界牛(クユーサー)が乗っている。その背中からは宝石の山が生えていて、その宝石の山の上に天使(マラク)が立ち、この大地を背負っていると説明される。この世界観にはいくつかのヴァリエーションがあるが、概ね、水、魚、牛、山、天使、大地という順番で配置されている。

イサの目の前を3日間も通過し続けた巨大な生き物!?

『千一夜』には、イサ(イエスのこと)がバハムートと遭遇した物語が載っている。天使に連れられて海に行ったイサは、目の前をバハムートがあまりに猛スピードで通り過ぎていくため、気を失ってしまう。目を覚ましたときに、神は「魚の全長と幅を確認したか」と問うた。イサは「私が見たのはウシです。全身が私の目の前を3日間も移動していきました」と返答する。すると、神は「汝が見たもの、3日間も移動していったあれこそが、実は魚の頭部なのだ」と答えたという。すなわち、3日間も猛スピードで目の前を通過し続けたものは、頭に過ぎなかったというわけである。

さらに、天使はバハムートの下にはさらに世界蛇(ファラク)がいて、世界蛇が口の中に水を湛えていて、そこをバハムートが泳いでいるのだと説明した。

バハムートは魚? それとも竜!?

近年のファンタジィ作品では、バハムートは竜のような存在として描かれる。これはテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』で竜として描かれたためで、これを踏襲した形で「ファイナル・ファンタジー」シリーズでも、黒い竜として描かれている。

《参考文献》

Last update: 2019/11/09

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