アルゴス

[ギリシア・ローマ神話]

名称Ἄργος Πανόπτης(アルゴス・パノプテース)《全てを見るもの・アルゴス》【古代ギリシア語】
容姿全身に100個の眼がついた巨人。
特徴眼が交代で眠るため、決して眠らない。ヘルメースに殺される。
出典アポッロドーロス『ビブリオテーケー』、オウィディウス『メタモルポーセース』ほか

百眼巨人、ペロポンネーソスで怪物退治!?

アルゴスはギリシア・ローマ神話に登場する巨人で、身体中に100個の眼がついている。たくさんある眼が交代で眠るため、決して眠ることはないとされる。非常に不気味な姿をしている巨人であるため、もしかしたら、恐ろしい怪物だと勘違いする人もいるかもしれないが、意外なことに、アルゴスは女神ヘーラーの忠実な部下である。ヘーラーの命を受けて、アルゴリス地方ではさまざまな英雄的な活躍をしているのである。たとえば、アルカディアで暴れ回っていた雄牛を退治したり、アルカディアで家畜を盗んで人々を悩ませていた半人半獣のサテュロスを退治したりしている。また、アーピス王を殺害した犯人のテルクシーオーンとテルキースの二人を討伐したりもしている。

さらには、通行人を攫って食べる怪物エキドナを退治したのもアルゴスだと伝えられている。エキドナといえば、ギリシア神話最恐の怪物テューポーンを旦那にしていて、彼との間にケルベロスキマイラヒュドラーなどの名立たる怪物たちを生んだ怪物たちの母である。そんな大物の怪物であるエキドナをアルゴスが退治したというのだからビックリである。残念ながら、アルゴスがどのようにエキドナを退治したのか、その詳細は現在に伝えられていない。もしかしたら、眠らないという特技を活かして、エキドナが眠っている間に退治したのかもしれない。

雌牛を守る百眼巨人!?

百眼巨人アルゴスの神話で最もよく知られているのは、イーオーという女性にまつわる物語である。あるとき、女性大好きな主神ゼウスはヘーラーの神官であったイーオーを見初め、黒雲に変身すると地上へ降りて行って彼女と交わった。しかし、さすがに浮気好きゼウスの正妻ヘーラーは慣れたものである。怪しい黒雲を発見すると、不審に思って地上に降りて行った。逢瀬の現場を差し押さえられそうになったゼウスは慌ててイーオーを白い雌牛に変身させて誤魔化そうとした。ヘーラーはそれを察すると、白い雌牛を譲り渡すように要求した。こうして、イーオーは雌牛の姿のままヘーラーに引き渡されることとなった。

ヘーラーは腹心のアルゴスを呼びつけると、白い雌牛を見張るように言いつけた。アルゴスは100個の眼があり、それぞれの眼が交代で眠るため、決して眠りにつくことはない。まさに見張り番としてうってつけの逸材である。アルゴスはイーオーをミュケーナイの森へ連れて行くと、オリーブの木にイーオーを繋ぐと、見張りを始めた。可哀想なイーオーは牛の姿のまま、モーモーと鳴きながら、草を食み続けることになったのである。

天界からこれを眺め、不憫に思ったゼウスはヘルメースを呼び寄せると、イーオーを取り返してくるように命じた。ヘルメースの杖には他者を眠らせる魔力があった。そこで、ヘルメースは葦笛を奏でながら、魔法の杖を使ってアルゴスを眠らせた。さすがの眠らずの巨人も、ヘルメースの魔力には敵わなかったのである。こうして、ヘルメースは眠り込んだアルゴスの首を斬り落とすと殺してしまった。ヘルメースがἈργειφόντης(アルゲイポンテース)《アルゴスの殺戮者》と形容されるのは、この出来事に由来している。

アルゴスの眼は孔雀の羽根に!?

その後、ヘーラーが地上へやってきたときにはアルゴスはヘルメースに殺されていた。ヘーラーはアルゴスの死を悼み、100個の眼を取り外すと、孔雀の羽根に飾ったという。こうして、孔雀は現在のような姿になったのだ、とギリシア神話は説明している。

《参考文献》