アングルボザ

[北欧神話]

名称Angrboða(アングルボザ)【古ノルド語】
特徴霜の巨人族の一人。ロキとの間にフェンリル、ヨルムンガンド、ヘルを生んだ。
出典『ギュルヴィのたぶらかし(Gylfaginning)』ほか

フェンリル、ヨルムンガンド、ヘルという怪物を生んだ女巨人!?

悪戯好きで知られるロキ神と言えば、シギュンという貞淑な正妻が知られていて、彼女との間にナリ、ナルヴィ、あるいはヴァーリという息子たちがいるが、ロキにはもうひとり、アングルボザという女巨人の妻も存在している。このアングルボザは霜の巨人(ヨートゥン)で、巨人の国ヨートゥンヘイムに棲んでいる。ロキ神との間に大狼フェンリル、世界蛇ヨルムンガンド、冥府の女主人ヘルという三兄弟を生んでいる。まさに怪物たちの母である。ちなみに、これらの三兄弟は、ロキがアングルボザの心臓を食べ、孕んで生んだという異説もあるが、これは『ヒュンドラの歌(Hyndluljóð)』の一節に由来する。そこでは、ロキが半焼けの女の心臓を見つけて食べて、これによって孕んだロキからたくさんの怪物が生まれたという記述がある。この説では、半焼けの女をアングルボザであると解釈している。

『バルドルの夢(Baldrs draumar)』には「三人の巨人の母」と呼ばれる巫女が登場する。この「三人の巨人」がフェンリル、ヨルムンガンド、ヘルのことを指すとすれば、この巫女はアングルボザと解釈できる。あるとき、バルドルが自分の死を暗示するような悪夢を見たため、オージンはニヴルヘルを訪問し、死者として眠っていた巫女を起こし、バルドルの悪夢の内容について語らせる。この説をとれば、アングルボザはすでに死んでいる存在ということになりそうだ。

アングルボザは鉄の森の魔女!?

ちなみに人間国ミズガルズの東には鉄の森(イアールンヴィズ)があり、そこにイアールンヴィジュル(Járnviðjur)と呼ばれる女巨人が住んでいたという。この巨人はフェンリルの一族を生んだと説明されているため、アングルボザと同一視されている。ヨートゥンヘイムそのものはミズガルズの東に位置すると考えられているため、この鉄の森はミズガルズとヨートゥンヘイムの境界にあることになる。

《参考文献》

  • 『エッダ ―古代北欧歌謡集』(訳:谷口幸男,新潮社,1973年)