アルミラージ

分 類イスラーム
名 称 المعراج〔Al-mi'raj〕(アルミラージ)【アラビア語】
容 姿1本の長くて黒い角を生やした野ウサギ。
特 徴インド洋の竜の島に棲息。獰猛な肉食獣。
出 典『被造物の驚異と万物の珍奇』(13世紀)ほか

アルミラージのイラスト

獰猛な一角ウサギ!?

アルミラージはイスラーム伝承に登場する一角ウサギである。普通の野ウサギのような姿だが、額から1本の黒くて長い角を生やしている。インド洋の島に棲息する。ウサギではあるが、獰猛な肉食獣であり、アルミラージを目にした獣たちは一目散に逃げだすとされる。

一角ウサギの伝承そのものは13世紀のペルシア人学者のザカリーヤー・カズヴィーニーの博物誌『被造物の驚異と万物の珍奇』(13世紀)で初めて言及されている。この書物では固有名詞こそ与えられていないが、黒く長い角を生やした黄色い野ウサギが描写されている。

『被造物の驚異と万物の珍奇』によると、その昔、イスカンダル(古代ギリシアのアレクサンドロス大王のこと)がインド洋に浮かぶ「竜の島」で竜退治をした際、喜んだ島民たちがお礼としてイスカンダルに送った贈り物の中に、この一角ウサギが含まれていたという。

この『被造物の驚異と万物の珍奇』は人気を博したため、その後、多くの写本が作られ、やがてこの一角ウサギは「アルミラージ」という名前で呼ばれるようになった。

聖アントワーヌも遭遇した!?

19世紀のフランスの作家ギュスターヴ・フローベールの『聖アントワーヌの誘惑』の中で、主人公の聖アントワーヌは次々と不思議な生き物たちと遭遇する。その多くは出典不明の生き物たちだが、作中には「海の島々に棲む角ウサギのミラグ(mirag)」が登場する。これはおそらくアルミラージのことだろう。

角を生やしたウサギの起源とは!?

角があるウサギという発想の根源には、ウサギの皮膚病があると考えられている。ショープ乳頭腫ウイルスに感染したウサギは、身体から角が生えているように見えることもある。額から生えた腫瘍が、まるで角が生えているように見えた可能性もある。

アメリカのジャッカロープは2本のシカのような角を生やした野ウサギ、ドイツのヴォルパーティンガーは2本の角と翼を生やしたウサギである。

《参考文献》

Last update: 2023/01/21

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