アッラーフ

[イスラーム]

名称اللهِ(アッラーフ)【アラビア語】
容姿姿や形はなく、ただ意思のみが存在する。
特徴イスラームの唯一神。
出典『アル=クルアーン(コーラン)』ほか

イスラームの神さまはユダヤ教やキリスト教の神さまと同じ!?

アッラーフはアブラハムの宗教の全知全能の唯一神を指すアラビア語である。アッラーとも呼ばれる。イスラームはアブラハムの宗教なので、基本的にはユダヤ教やキリスト教の神さまとイスラームの神さまは同じである。そのため、イスラームから見ると、アッラーフはユダヤ教やキリスト教のヤハウェと同一である。けれども、ユダヤ教やキリスト教の側は、イスラームのこの立場を認めていない。そのようなわけで、以下、この項目では、イスラームの唯一神アッラーフについて解説する。

いい加減、ムハンマドでダメなら、もう終わりだよ!?

アッラーフは何度もムーサ―(モーセ)やイーサー(イエス)などの預言者を遣わして、この世に正しい教えを伝えようとしたという。しかし、預言者がいなくなってしまうと、教えは後継者によってすぐに歪められてしまう。イスラームによれば、こうして、成立したのがユダヤ教やキリスト教なのだという。そして、アッラーフは最後の預言者としてムハンマドを遣わした。これが我々人類にとっては最後のチャンスであり、このムハンマドの教えが歪められてしまったら次はないのである。

アッラーフは意思のみの存在!?

ユダヤ教やキリスト教では、神は自分の姿に似せて人間を創造したと説明しているが、イスラームではアッラーフは姿や形を持たない意思のみの存在である。このため、アッラーフを絵画や彫像などで表現することはできない。イスラームで厳しく偶像崇拝を禁じているのはこのためである。

また、『アル=クルアーン(コーラン)』第112章「純正章(アル・イフラース)」には「アッラーフは自存され、産みもしないし、産まれたのではない」とあるように、アッラーフには親もいなければ、子供もいない。従って、キリスト教のように「神の子」という概念は存在しない。イスラームにおいては、イーサー(イエスのこと)は「神の子」ではなく、ただの人間である。当然、ムハンマドも最後の預言者ではあっても、人間である。

ユダヤ教やキリスト教ではヤハウェは6日間でこの世界を創造し、7日目に休息をとったとされる。しかし、イスラームでは、全知全能のアッラーフが休息を必要とするのはおかしいとして、神さまが7日目に休息したという出来事を認めていない。

コラム:実は多神教時代の最高神だった!?

イスラームの唯一神アッラーフであるが、実はこのアッラーフ、遡っていくと、イスラーム以前のアラビアの多神教の最高神であったことが判っている。イスラーム以前のアラビアは多神教で、カアバ神殿には360の神々の聖像が祭祀されていたという。その最高神がアッラーフだったと考えられている。アッラーフにはアッラート、マナート、アル・ウッザーという3女神が従っていたという。古代アラビアには珍しい石を崇拝する文化があったようで、各所の神殿に白石や赤石などの珍しい石が安置され、崇拝されていたという。カアバ神殿の黒石はアッラーフの御神体とされていたようだ。

一神教を掲げるムハンマドは630年、大勢のムスリム軍を率いてマッカ(メッカのこと)に侵攻し、降伏させると、カアバ神殿に安置されていた多数の偶像を破壊した。そして、アッラーフの神殿としたのである。

今でもカアバ神殿には黒石が祀られていて、巡礼者は神殿を7周し、1周回るごとに黒石に接吻する(今では巡礼者が多くなり、指を差すだけに簡略化されている!)。ムハンマドもジブリールから神の啓示を受ける前には、カアバ神殿を再建し、自らの手で神殿に黒石を安置している。また、ムハンマドの死後、2代目の後継者となったウマルによれば、ムハンマドも黒石に7回接吻したと伝えられている。ムスリムが黒石に接吻するのは、黒石への信仰ではなく、このムハンマドの精神を信じて石に敬意を払っているからだ、と説明される。けれども、古い時代から連綿と続くアラビアの古い宗教の名残りである。